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涼風の残響【鬼滅の刃】

第16章 里と狼煙


やはり風音にとても慕われている実弥は眉根を寄せて難しい表情となり、爽籟が乗った頭に軽く自分の頭を預ける。

「何も代償がなければそうかもしんねぇけど、それで随分痛い思いも辛い思いもしたろ。お前の方が負担少ねぇなんて誰も思わねぇよ」

(それに塵屑野郎に狙われちまってんじゃねぇか……は言えねェなァ。また気にして泣いちまうだろうし)

数日前にその件で涙を流しかけた風音にこれ以上負担をかけないよう……と言うよりこの里にいる間は甘やかせてやると決めたので、風音が悲しくなる話は実弥の胸の中だけに留めた。

「はァ、そろそろ部屋戻るか。飯食って甘味も食うんだろ?」

「うん!食べる!後は柔軟だけして寝るまでは実弥君とたくさんお話する!そう言えばお手紙でね……」

危ない。
このままでは永遠と話し続けてしまう。

話を聞いてやるのは全く問題ないのだが、このままだと逆上せてどちらかが倒れる未来が待ち受けている。

そうならないために楽しそうに口を開き始めた風音の背と膝の裏に腕を差し入れて抱え上げた。

「話は部屋で聞いてやる。逆上せちまったら飯も甘味も食えねぇし、柔軟どころか寝る前の話も出来なくなっちまう。いいな?」

問い掛けられたものの既に温泉から出て脱衣場の方へ移動を開始しているので、風音にはほぼ選択肢は与えられていない。
だがそんなことを気にする風音であるはずがなく……二羽の鴉を頭と肩に携えたままニコリと微笑んで実弥の首元に腕を回して身を委ねた。

「もちろん!まだ夜は長いもんね、ここで終わっちゃったら勿体ない」

「そうだなァ……ちょっと待て、人の気配がする。お前は早く脱衣場に入れ、見られたら……」

「不死川玄弥!駄目だって!話を聞いてくれ、中には不死川さんと風音が……あぁ……遅かった」

実弥が向かう予定をしていた脱衣場から聞き覚えのある声が聞こえ、次の瞬間にはその声の主が言っていた玄弥が現れてしまった。

双方予想外の人物の登場に驚き固まり数秒経過。
先に動き出した実弥は元来た道を戻り風音を抱えたまま温泉の中へと身を沈めた。
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