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涼風の残響【鬼滅の刃】

第3章 能力と剣士


「ゔ……ずみばぜん……実弥ざん……痛い」

怒りの根源である腕をそろそろと下におろすと頬を掴む手の力は僅かに弱くなった。
それでも手を離してはくれず、まるで頬の感触を楽しむかのようにフニフニと指が動いている。

「あの……実弥さん?」

「柔らけェなァ。食ったら美味そうだ」

そう言って真顔で頬に顔を近付けてくるものだから、今度は風音が顔を真っ赤に染め目を見開く番になってしまった。

「お、美味しくないですよ!頬っぺただけ柔らかいだけで体なんて骨ばってますし!」

自分から腕を広げて大胆に実弥を誘ったくせに、いざこうして迫られると顔を真っ赤にして慌てふためき頬を掴んでいる手から逃れようともがいている。

その姿が実弥の年上心をくすぐり、思わず手を離して頭を腕でをグイと抱き寄せていた。

「ハハッ、こんくらいで真っ赤になんなら腕なんて広げんなァ!俺を誘うなんてまだまだ早ぇわ!せめて顔近付けられても赤くなんねぇくらいになれよ」

明らかに子供扱いをされている言動であっても、風音にとっては抱き寄せてもらい心地よい温かさに包まれたことに変わりなく、反射的に更に温かさを求めて実弥の背に腕を回した。

「……お前なァ、言ったこと理解してんのか?不用意に男に抱き着くな、嫁入り前だろうがァ。嫁に行きたい男が出来た時、後悔することになんぞ」

「後悔なんてしません。実弥さんと触れ合えることに後悔なんて……後にも先にもありませんから。それに知らない誰かのお嫁さんになるくらいなら一生独り身でいいもん。実弥さんが誰かと幸せになっているのを遠くから見てる方がよっぽど幸せだから……だから、今だけは引き剥がさないで」

きっと目の前の少女でなければすぐにひっぺがし、今後同じことをするなと強く言っていただろう。
しかし何故だかこの無警戒にしがみついてくる少女にそれはする気になれず、抱き締め返すまではいかないものの少し寂しげに映る背中にそっと手を添えた。

「引き剥がさねェから泣いてくれんなよ……まだ聞きてぇことがあんだからな。ほら、そのままでいいからお前の能力の事を教えてくれ。どうやって発動すんのか、それをすることによってお前の体にどんな影響が出んのか……教えてくれねぇか?」

実弥の優しい声音に頷き、風音は自身の能力についてぽつりぽつりと話し出した。
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