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涼風の残響【鬼滅の刃】

第3章 能力と剣士


実弥を見つめる瞳は不安げに揺れているものの、小さな声に似合わない強い意志もこもっているように見える。
初めて見せた強い意志、心身共に疲れ果て弱りながらもこの短期間で自分の行く先を考え導き出した風音に、実弥の怒りは急激におさまり消え去った。

今も尚見つめ続けてくる翡翠色の瞳に見入りそうになりながら、実弥は穏やかに微笑んでふわりと柔らかな頬を撫でた。

「そうかィ。鬼殺隊がどんな組織か知った上で、それでも剣士になるって決めたんなら止めねぇし俺が鍛えてやる。けどなァ、体に栄養を満たすのが先だァ。体鍛えるも何も、こんな細けりゃ付くモンも付かねえからな。分かったか?」

一見すると鋭く萎縮してしまいそうな吊り目は柔らかく細められ、風音を映した瞳は温かさの中にほんの少し悲しみが燻っているように風音には見えた。

それに踏み込んでいいのか風音には判断出来ないが、自分に話さないのならば今は聞くべきではないと思い直し、かわりにその悲しみが少しでも癒せたら……と残りのおはぎを口に放り込んでから両手を傷痕の残る頬にそっと当てがって包み込んだ。

すると柔らかに細められていた目が驚きに見開かれ、ピクリと体が反応した。

「何を……」

「実弥さんは優しいから、自分のことはいつも二の次になっちゃってます。まだまだ私は弱いけど、身も心も強くなるので……たまには頼って下さい。私は誰よりも実弥さんの力になりたい。実弥さんを実弥さんの側で支えさせて欲しいです」

言っている本人は全く恥ずかしげもなく言ってのけているが、言われている実弥の方が恥ずかしくなり顔に血が一気に昇って真っ赤になってしまった。

「お前……それ無意識に男に対して言うモンじゃねぇぞ。押し倒されても文句言えねェからなァ」

「?他の人に押し倒されたら困るけど、実弥さんにギュッてしてもらうのは好きなので大歓迎です!いつでもどうぞ!」

そう言って実弥の頬から手を離し腕を広げて待つが、それを甘んじて受けられるほど実弥の心の準備は整っていない。
顔を真っ赤にしながら片手で風音の頬をムギュッと掴み、目を吊り上げて顔を近づけた。

「俺に対してもっと警戒心持てねぇのかァ?!男だぞ?!母ちゃんじゃねェんだ、簡単に腕広げて誘うなァ!」
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