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涼風の残響【鬼滅の刃】

第16章 里と狼煙


二人で温泉に浸かり始めて数分。

理由があるわけではないがただただ無言の状態が続き、風音は濡らした手拭いに空気を含ませ湯の中で握り潰すを繰り返していた。

「……何やってんだよ。それ、楽しいかァ?」

「うーん、楽しい……のかな?」

「いや……俺に聞かれても分かんねェだろ。で、初めての温泉はどうなんだ?」

特に楽しんでしていたのではないらしい。
それでもその行為をしている間も今も笑顔なので全く楽しくなかったということはなかったのだろう。

そしてその笑顔を更に深め実弥に向き直った。

「すごく気持ちいい!体はポカポカしてあったかいのに、首から上はひんやりしてるからいつまででも入れそう!しかも広いから実弥君と並んで入れるし。ここにいる間、一緒に入りに来たい……です!」

「そりゃあ何よりだ。まァ昼間は鍛錬とかするとしても夜は時間余るだろうし、里を出るまでは一緒に入りに来ればいいだろ」

嬉しい実弥のお返事に風音は思わず手に持った手拭いを握り締め、ぴたりと実弥の腕に自分の体を寄せて空を見上げた。

「星がいっぱい。ここは街灯があんまりないから綺麗に見える。ご飯も美味しいしお風呂も気持ちいいし、そのお風呂から星が見えるなんて贅沢……」

バサリ……

「お前……いつもなんか喋ってる時に宿り木にされてんなァ」

何かがはためく音と同時に風音の視界が真っ黒に塗りつぶされてしまった。
何が起こったのかは実弥の言葉や今までの流れで何となく感じ取れたので、何かをはためかせ額に舞い降りたモノをゆっくり抱え上げる。

「やっぱり爽籟君だった。フフッ、どうしたの?一緒にお風呂入る?」

「風呂ハアンマリ…… 風音ノ頭ノ上ガイイ」

「風呂嫌いなら大人しく楓と木の上に止まってろよ……お前がこっち来ちまったら楓が一人……一羽になっちまうだろうが」

一羽になってしまっている楓を探そうと風音が左右を見渡すと……見渡すまでもなくちょうど風音と実弥の間になるように温泉の淵に腰を下ろしていた。

「あら、実弥君、楓ちゃんもここにいるから大丈夫だよ。何だかいいね、皆で賑やかにお風呂に入るのも楽しい!爽籟君と楓ちゃんならこの格好見られても恥ずかしくないし」
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