第15章 豆撒きと刀
「まともに動けねぇヤツは寝てろ……っておい!」
首元から実弥によって組紐が引き抜かれる直前……本当に咄嗟に風音は実弥の首元に垂れ下がった組紐を強く引っ張り胸元へと持っていく。
「私……一人脱落なんてイヤ。大丈夫……鬼側が勝つから」
風音が意識を飛ばして実弥の胸元に身を預けた瞬間、柱たちの体がぴくりと反応した。
今まで絶えず見えていた先の光景が突如として途絶えたからだ。
だからと言って柱たちの形勢が傾くわけもなく……ひっそり風音によって紐を引き抜かれそうになっている実弥を除き、柱たち全員の力で剣士たちは間もなく脱落と相成った。
「おい、不死川!何でサボってやがった!嬢ちゃん寝かせて……やってから……お前、何固まってんの?」
意識を失った風音と戦闘に戻らなかった実弥の様子を見なくてはと柱たちがわらわらと集まってきてしまった。
四方八方から集まってくるので視線を逃す場所に戸惑ったが、実弥はどうにか誰もいない場所を見つけて顔を背ける……冷や汗を大量に流しながら。
「風音ちゃん、たくさん頑張ってくれたから寝ちゃったのね?あら?風音ちゃんの手に何か握られているわ」
「これは……不死川の組紐だな。なるほど、柊木の組紐を取ったはいいものの不死川自身も柊木に紐を引き抜かれかけたと言うことか。それで戦闘に戻らなかったわけだ。不死川、してやられたな」
「なるほどな!嬢ちゃんの意識が派手にぶっ飛ぶ前に一人脱落なんて……って聞こえたが、こういう事だったわけね!ブハッ!油断してたお前が悪ぃな!」
顔を背けようと冷や汗を流そうと柱たちは実弥を逃してはくれない。
そして組紐を強く握りしめたまま意識を飛ばした風音も逃してくれるはずがなく、危ういところで辛うじて首元に引っかかっている紐を押さえながら実弥は固まり続けるしか出来なかった。
「一先ず豆撒きは終わりを迎えた。後日会議を開き、今日の結果を元に鬼殺隊剣士の質の向上に役立てる手を考えよう」
行冥の言葉に頷いた柱たちは剣士たちの所へと各々移動し、豆撒き終了の旨を伝えてこの日はお開きとなった。
その間も実弥は風音を胸元に抱き寄せたまま固まっていたのは言うまでもない。