第15章 豆撒きと刀
柱側の鬼として参加している風音を背後から狙ってはいけないなどという決まりは勿論ないし、風音も背後から狙われて紐を取られることもあると想定していたので、有難い助けであったとしても炭治郎の行動に驚き固まっている。
「風音は俺や柱より随分と疲れているはずだ。身も心も疲労困憊の女の子を後ろから狙うのは良くないと思う!」
「疲れはあるけど……まだ戦えるかと……」
「竈門少年!それでこそ俺の継子だ!ふむ、確かに風音は色々と限界が近いように見える!奥に踏み込み過ぎず、端から狙っていくといい!」
そこへ杏寿郎がやって来て風音をグイグイと実弥の方へと押し戻し、自らの継子と木刀を交え出した。
そして風音を目の前に押し付けられた実弥は身を屈めて風音の顔を覗き込み、手を握って端の方へと強制的に移動させるが……やけに進みが遅い。
「何足踏ん張ってんだァ?変なとこに体力使うな、条件は満たしただろ?」
「満たしたけどまだ大丈夫です!少し眠いくらいなので……まだ戦えるんです。……本当に!」
踏ん張り実弥の力に抗っているため地面が足で抉られている。
あちこちで柱たちが縦横無尽に技を放っているので、これくらいの荒れ方は可愛いものである。
だが可愛らしい荒らしをしていても風音の態度は反発的で可愛らしくない。
目は半分しか開いておらず体幹すら保てていないのに、実弥の引っ張る力に全力で抗い端に行くことを良しとせず、木刀を強く握り締めて今にも剣士たちの真っ只中に飛び込んでしまいそうだ。
「……そうかィ、ったく。どいつもこいつも言うこと聞きやしねェ。はァ、風の呼吸 肆ノ型 昇上砂塵嵐」
「なっ……んで?!」
風音に気を取られている実弥を討つなら今だと果敢にも挑んできた剣士を軽々と吹き飛ばした…… 風音ごと。
吹き飛ばされた風音はどうにか体勢を整えて実弥に向き直るも、いつの間にか目と鼻の先に来ていた実弥に頬を掴まれ顔を固定されていた。
「お前はもう休んどけ、ここで終いだ」
「どうして……ーー?!」
するりと首元から何かが解ける気配に風音の全身から冷や汗が流れる。