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涼風の残響【鬼滅の刃】

第15章 豆撒きと刀


「鬼を……体は大丈夫なの?!苦しくない?!胡蝶さんは……実弥君は……」

知ってるの?

そう問い掛けようとした次の瞬間、目の前で木刀を振り上げていたはずの玄弥の体が吹き飛ばされていた。
何で……など考えるまでもない。

まだこの近辺にいた実弥の耳に玄弥の叫びが届き、無情な現実に怒り悲しみ反射的に技で吹き飛ばしたのだろう。

「鬼連れてる剣士の次は……鬼喰ってる剣士だとォ?!」

風音の前には鬼に対しての感情をそのまま表した『殺』 と染め入れられた白い羽織。
後ろ姿にも関わらず怒りが感じ取れるほどに怒気を放っており、風音が目を丸くするほどである。

「才能ねェヤツは剣士なんて辞めちまえ!いるだけで足手まといだァ!」

以前に実弥本人から聞いた通り、鬼を喰ってまで鬼殺隊に身を置く玄弥を追い出すため木刀を振り上げて技を放つ構えを取ってしまった。
そんな玄弥への愛情故に振り上げてしまった実弥の腕をおさめさせるように、風音の手がそっとその腕に添えられる。

「……お前は引っ込んでろォ。事情は前に話したはずだ」

こちらに向けられた実弥の目はかつてないほどに鋭くなっており、余計なことを言ってしまえば風音とてどうなるかわからない。

しかしそんな視線を向けられようと、この場でのみ風音にだって言い分がある。
しかしだからと言って実弥の本心をきちんと覚えている風音は実弥の玄弥への想いを否定する気などない。

今にも振り払われそうな手を添えたまま、真っ直ぐに実弥を見つめ返す。

「師範、私は玄弥さんに風柱様の継子として戦って欲しいと願ってもらいました。そして私はそれを受けました。決着が着くまで見守っていて下さいませんか?指標になるかは分からないけれど……森から出てきた剣士の方々にいい影響があるかもしれませんよ?」

実弥の視線を促すように森の方へ顔を動かし、騒ぎを聞き付けて出てきた剣士たちの姿を確認させる。
それでもまだ怒りのおさまらない様子の実弥の手をギュッと握り締め、今度はふわりと微笑んで言葉を続けた。

「もし師範にとって見るに堪えない試合であったなら、その時は止めてください。私はもちろん玄弥さんも師範の指示に従います……実弥君に成長した姿を改めて見て欲しい」
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