第15章 豆撒きと刀
「私が見た先は……これが全てです。槇寿郎さん……手拭いをお使い下さい……」
「いや……それは君が使いなさい……君を泣かせてしまったとなると……不死川に申し訳が立たんからな」
二人して涙を流し手拭いを譲り合っている理由。
それは槇寿郎に聞かれた杏寿郎の迎えていたかもしれない最期の様子を伝え伝えられ……をこの部屋で行ったからである。
「実弥君は普段は穏やかな方なので……怒ることはしません。実弥君も杏寿郎さんも……柱の皆さん、すごく優しくて。その優しい皆さんに杏寿郎さんはとても慕われています。私はこのような身の上ですので杏寿郎さんにご迷惑をお掛けするかもしれませんが、最善を尽くしますので今後ともよろしくお願いいたします」
「杏寿郎は俺の妻の血を濃く受け継いでいるので優しく聡い子なのだ。そうか、あの子は皆に慕われ己の責務を全うしているのだな。君の身の上は何とも胸を痛めるが、無理せず頑張りなさい」
すっかり話し込み、何だったら酒も飲んでいないのに打ち解けている。
居間にいる二人の柱が鎹鴉からもたらされた何かしらによって項垂れる中、こちらは和やかな雰囲気だ。
「ありがとうございます!槇寿郎さん、よろしければお昼ご飯を食べていってください!お酒でお体が弱っているようですし、薬膳料理を作りますよ!」
「ん?あ、あぁ……邪魔でなければご相伴に預からせてもらう。君の薬に関する知識は独学なのか?」
「いえ!母が生前薬師をしておりまして……」
そして和やかな雰囲気のまま三人の待つ居間へと足を踏み入れ……見たことのない柱二人の何とも形容しがたい……顔に汗を流しながら難しい顔をしている姿を目にして風音と槇寿郎が固まった。
「実弥君、杏寿郎さん?どうかしましたか?……えっと、千寿郎さん。何かご存知ですか?」
そんな二人の背を撫で宥めている千寿郎に問い掛けると、首をかしげながらも事のあらましを教えてくれた。
「豆撒き……ですか?豆撒きがそんなにおぞましい催しだとは私の記憶にないのだけど……槇寿郎さんは何か……え?!槇寿郎さんも固まってる!な、何?!実弥君、豆撒きって何するの?!しかも私が柱側で参加ってどういう……」