第3章 能力と剣士
「半日ですか?!つまり皆さんとお昼を食べている途中に寝て……しまったと?!」
風音が落ち着きを取り戻して涙が止まったかと思うと腹の虫が盛大に鳴いたので、実弥が吹き出しそうになるのを堪えることなく吹き出し、今は買っておいたおはぎを片手に向かい合って座っている。
「別に誰も怒っちゃいねェよ。鬼狩りの現場で保護された奴はだいたい皆同じようなもんだ。柱なんてそんな奴らを嫌ってほど見てっからなァ……てかそいつ、暑くねぇのか?」
悲しい現場を多く見てきたであろう実弥の表情を伺うも、自分を思ってか翳ることはなかった。
その代わりに
そいつ
と呼ぶモノに視線を変えた時は苦笑いを浮かべた。
「でも今度会えたらお詫びします。あんまりきちんと……お話し出来なかったし……ん?爽籟君ですか?温かくてフワフワで気持ちいいです!フフッ、すごく可愛い!」
寝てしまったお詫びや自身の能力のことを柱たちに話せなかった事が風音の胸を苛むが、肩に体を置きながら羽を首元に巻き付けている爽籟の温かさに胸の痛みが和らぎ笑顔が零れる。
爽籟も爽籟で頬を擦り寄せてくれる風音の行動や言葉が嬉しいのか、ピタリとくっついて離れようとしない。
「何か斬新な装飾品みたいになってんじゃねぇか……爽籟、お前俺の鎹鴉だろ、風音が万が一鬼殺隊の剣士なったらどうすんだァ?コイツにはコイツの鎹鴉がつけられんぞ」
「…… 風音ノ……鎹鴉……ツケラレル」
「何片言になってやがる……そりゃあお前、付けられんだろぉよ」
「……」
「……」
既視感を覚える遣り取りをぶち破るのはやはり風音だった。
「大丈夫だよ!その時は右肩は爽籟君、左肩は新しい子って場所を決めたらいいんだから。あの、それで……私の力って鬼殺隊で役に立ちますか?立つなら私も……」
フワフワな羽毛に包まれているので何となく緊張感が削がれてしまうが、風音の表情は真剣で冗談や興味本位で実弥に聞いていないと分かる。
だが役に立つかなど詳しく聞けていない今の状況では実弥には判断出来ない。
しかも懸念事項がある。
「役に立つ立たねぇ以前に人に知られることに怯えてる時点でそれは使えねェだろ……さっきのは例え話だ」