第14章 炎と風
「ちょ、ちょっと待て!父ちゃんが鬼?だって……鬼殺隊の剣士って言ってたろ?どうして……」
風音の言葉に驚き疑問を呈したものの、その途中で疑問の答えが分かってしまった。
そして風音から返ってきたのは予想通りのもの……
「任務中にね……鬼舞辻に鬼にされちゃったみたいなんです。お父さんの頸は実弥君の手を借りて斬ったからもういない。色んなことが重なって、私は鬼殺隊にいる事が最善なんだと思います。あの時みたいに鬼舞辻に狙われても、鬼殺隊にいる限り日輪刀で対抗したり楓ちゃんを通して助けを求めることも……出来るから。だから実弥君は私を鬼殺隊から無理に除隊させないんだと思います」
予想通りのものを通り越した壮絶なものだった。
実弥に心配をかける身だから……せめて強くなって心配を少なくしようと継子として尋常でない速度で柱に次ぐ甲という階級まで上り詰めた風音に何も言えなくなった。
そんな中でも自分たち兄弟と同じように親が鬼になってしまった目の前の少女に……何故か心の内を話したくなった。
兄が大切に守ろうと力を尽くしている風音に……
「俺…… 風音の父ちゃんみたいに鬼になっちまった俺らの母ちゃんから守ってくれた兄貴に……人殺しって言っちまったんだ。助けてくれた兄貴に俺は……だから兄貴に嫌われてんだって……」
脚の上に置いている拳が強く握ることにより震えていたが、その震えをおさめ悲しみに沈んだ胸の内を癒すかのように、暖かな何かで包み込まれた。
「大丈夫。怖がらないで……私なんかよりも玄弥さんは実弥君がどんな人か知ってるはずです。玄弥さんは玄弥さんらしく……思うようにして下さい。心許ないかもしれないけれど、私は玄弥さんがそうあってくれることを応援してますし、何より嬉しく思います」
穏やかな風音の笑顔が遥か昔に見た兄の穏やかな笑顔と重なり目の奥にツンとした痛みが走った。
こんなところで……少女の目の前で涙を流してなるものかと、重ね合わせてくれている手の温かさが離れることは物悲しくなるものの、立ち上がって襖の前に移動した。
「悪ぃ、怪我してんのに無理させちまって。また……兄貴のこと聞かせてくれ」
「もちろんです。いつでも来てください」
優しい声音に笑みを零し、玄弥は後ろ髪を引かれる思いで部屋を出て行った。