第14章 炎と風
「すみません、醜態を晒してしまって。お陰様で落ち着きました!玄弥さんもお疲れでしょ?お風呂、いただきてきてください」
泣き顔から一変、ふわふわと笑う風音に苦笑いを零した後、玄弥は真剣な眼差しで風音に向き直った。
何を聞かれるのか……考えなくとも風音は十分に理解している。
「兄貴は……柊木……えっと、風音に鬼殺隊辞めろって言わねぇのか?兄貴は俺が鬼殺隊にいるのが目障りなように感じる……なのに風音は……兄貴に認められてるように見える……正直羨ましいし、何でって思ってる」
そう思うのは仕方がないだろう。
弟の自分は認められるどころか邪険にされているのに、赤の他人である風音は認められ大切にされている。
目の前の事実に嫉妬や羨望が浮かぶのは当たり前だ。
今に至るまでの経緯など玄弥は知るはずもないのだから……
その玄弥の嫉妬や羨望を解消することは容易であるが、実弥の強い想いを知っている風音が安易にそれを口にすることは出来ない。
一方を優先する余り一方を蔑ろになどしてはならないと、言える範囲で口を開いた。
「私のお父さんは鬼殺隊の剣士でした。その影響で私は全集中の呼吸常中を、実弥君に鬼から助け出されるまでに知らず知らずのうちに習得してたんです。それを見初めて頂いた……のかな」
始まりはそこだったのだろう。
実弥は風音の力を鬼殺隊に欲したから弟子とした。
そこに恋愛感情などあるはずもなく、悪鬼滅殺のために鍛え始めたに過ぎない。
そもそも恋愛感情などがあれば弟子になどしてもらえなかった……本人が実際にそう言っていたのだから間違いない。
玄弥との違いはただそれだけだ。
実弥が風音を大切だと認識した頃には既に鍛えていたので、放り出すことが出来ない状態だった……それだけの違い。
「それから鍛え始める前にお父さんが鬼になってたって判明して……能力のこととか私の血が鬼にとって毒だって分かったり。私を鬼殺隊から放り出すと何をしでかすか分からなかったのもあるし、私が鬼に喰べられて能力が鬼側に渡るのを……」