第14章 炎と風
「冨岡さんは柱です。でなければ……柱の皆さん……特に私の師範が柱合会議に冨岡さんが出席することを良しとするわけがありません。柱としてどなたかの想いを繋いでいるからこそ、こうして鬼と戦って……いるのではないかと……私は思います。少しずつでも……冨岡さんがご自身を認めてあげることが出来るよう……祈っています」
流暢に話していたのは始めだけ。
一人きりで得体の知れない鬼舞辻と戦い血を流した体は限界が近いらしく、出血を無事に止めていても意識が朦朧としだしてしまった。
「風音!寝ちゃダメだ!意識を失ったら血が出てしまう!おい!」
「ん……そうだね。ここを出ないと……森の外で剣士の人たちが待ってくれてるし……少し待ってね、たぶん……立ち上がれる」
合流場所へと定めた場所へ向かわなければと体に力を入れて起き上がろうとするが全く体は言うことを聞いてくれない。
このままでは皆に迷惑をかけると焦れば焦るほど体に痛みが走り思うように動けず……もう動くことを諦めた。
「冨岡さん、勇さん、玄弥さん。先に戻ってて下さい。私はすぐに動けなさそうなので、動けるようになったら追いかけます。大丈夫、もうどの未来でも鬼舞辻は来ませんから」
諦めたかと思えばこんなことを言う始末だ。
ここに実弥がいれば頼っていたのではないか……そう思うと勇の胸にチクリと痛みをもたらした。
「それ……不死川さんに言ったら怒られるの分かってる?不死川さんじゃなくっても、俺たちだってそんなこと言われたら怒るぞ?休める場所まで運ぶから意識だけは保っててくれ」
静かな勇の言葉に確かな憤りを感じ取った風音は三人の顔を見て涙を頬に伝わせた。
「ごめんなさい……重いかもしれないけれどお願いします」
「……俺もごめん。言い過ぎた……少し揺れるかもしれないけど出来るだけ揺れないように気を付ける。苦しくなったらすぐに言ってくれ」
小さく頷いた風音を勇が抱き上げ、ようやく任務地から抜け出した。