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涼風の残響【鬼滅の刃】

第14章 炎と風


「水柱様!三時の方向をお願い致します!こちらは私たちがどうにかしますので!夙の呼吸 玖ノ型 星の入東風」

風音たちの姿が見え始めた義勇の耳に届いたのはこれだった。

何が何だか分からなかったが風音が先を見た上で願ってきたことならば問題ないのだろうと、言われた通り三時の方向に移動して突然繰り出されてきた攻撃をいなした。

……しかし攻撃はこれだけ……義勇に迫ったのは。

義勇は突然の風音の声に反応することに気を取られ、風音の性格をこの時ばかりは頭から完全に抜け落ちてしまっていたのだ。

「柊木!」

技で盾となるものを展開しようとした時には風音は至る所から血を噴き出させ地面に叩きつけられていた。

せめてこれからくる攻撃からは守ってやらなくてはと風音や二人の剣士の前に立ち塞がるも攻撃は繰り出してこられず、こともあろうか鬼舞辻の気配すら完全に消え失せてしまった。

「逃げたのか?……柊木、生きているな?出血は止められるか?」

「お待ち……しておりました、水柱様。辛うじて生きてます。出血は……もう少しすれば止められるかと」

義勇には叱られなかったことに心の中でこっそり息をつきながら止血を……

「あまり自分を犠牲にするような戦い方をするな。俺が来たのだから任せられることは任せろ」

やはりお小言をいただいてしまった。
確かにこの場にいる剣士の中で体に傷を負っているのは風音だけである。

実弥に現状を見られたらと思うと身震いしそうであるが、どうにかこうにか人として生き抜けたことに笑顔が零れる。

「肝に銘じておきます。勇さんや玄弥さんが来てくれて、柱の冨岡さんが来て下さって本当に救われました。ありがとうございます」

地面に寝そべりながら頭をぺこりと下げる様を見た義勇は、悲しげに目を細めふいっと向こうを向いてしまった。
何かいけないことを言ってしまったのかと首を傾げると、切なく胸を締め付けるような小さな声が風音や二人の耳を刺激した。

「俺は柱ではない」

どういう意味が込められて発せられた言葉かは分からない。
分からないけれど風音にだって分かることはある。
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