第14章 炎と風
叱られるのも柱だけでなく一般剣士にまで及んでしまった。
居心地が何となく悪くなってしまったが落ち込んでいる暇はないので、地面に下ろしてもらって日輪刀を構え直す。
「死ぬほどのものじゃなかったからいいかなって……フフッ、師範に叱られてるみたい。それはともかくとして、後退しながら攻撃をいなしましょう。次は正面上空から攻撃きます、十秒後に各自露払いを」
一般人であれば十秒などでは僅かな距離しか後退出来ない。
しかし日々劣悪な環境下で鬼狩りを生業としている剣士たちだと遥か後ろまで下がることが出来てしまう。
例え鬼舞辻の追いかけて来る速度が尋常でなくとも、すぐに追い付かれる事態はどうにか避けられるのだ。
「呑気に笑ってんなよ……不死川、走るぞ!」
「……あ、あぁ」
呑気に笑っていた風音に呆れながら走り出した二人の背を追う形で風音が殿(しんがり)をつとめ、義勇が到着するまでの対策を考え始めた。
(上空からの攻撃さえ防ぐことが出来れば……よし!)
より確実性を高めるため二人の背に自分の手を添えて望む未来となるように見えた先を送り込む。
それに驚いた……と言うより少し怒っているのか僅かに目じりを吊り上げて風音に視線を送ってきた。
いつも通り心の中に少しの罪悪感を抱きながら二人に微笑み返し、立ち止まって地面に足が埋まるほどに踏み締める。
「水柱様!三時の方向をお願い致します!こちらは私たちがどうにかしますので!夙の呼吸 玖ノ型 星の入東風」
叱りつけてやろうと思った時には既に風音は高く飛び上がっていたので、見せてもらった先を再現するしかない……それがどんな結果をもたらそうとも。
「ぼさっとすんなぁ!死なねぇならアイツの案に乗るしかねぇだろ!」
「くっ……分かってるよ!風音!これ終わったら不死川さんに言いつけてやるからな!」
何とも恐ろしい(風音にとって)言葉を叫び終えた勇は、玄弥と共に自らの技を幾つも連続で放ち、少しでも風音の負担が少なくなるように正体不明の攻撃を弾き飛ばす。
もうすぐ地面に降り立つはずだった。
……正確には本人含む二人共がそれは叶わないと分かっていた。
風音の体は新たに放たれてきた攻撃で全身を引き裂かれ、力なく地面へと叩き付けられた。