第14章 炎と風
「それに……もうすぐ水柱が来てくれる。兄貴……風柱と炎柱も向かってくれてるって鴉から報せが入った。アイツの足止めは俺と立花でする……お前は黙って傷の手当てでもしててくれ」
「あんな嫌なものを見せて……それでも助けに来てくれたの?ごめんなさい……でもすごく嬉しい。……ふぅ、勇さん、もう下ろしてもらって大丈夫。柱の皆さんが来てくれてるなら一緒に私も戦わせてほしい」
今にも溢れそうだった涙を拭った風音に二人は顔を見合わせて溜め息を零した。
「風音さぁ……鴉から聞いたんだけど跳ねっ返りな性格なんだって?大丈夫じゃないのに大丈夫だって主張して、血を鬼にかぶせて戦い続けるとかなんとか……」
どの柱の鎹鴉からの報せなのか……
風音の性格を知っているのは辛うじて柱だけだったのに、今回の件で勇たち一般剣士にも知られてしまった。
「大丈夫なのは本当なんだけど……血をかぶせるのも本当なんだけどね。ゲホッ……勇さん!私を落として!攻撃が来ます、すぐに刀を構えて!」
さすがに落とすことはしなかったが、勇は風音を地面へと下ろし即座に日輪刀を抜き取って来るであろう攻撃に備える。
隣りを走っていた玄弥も同じく日輪刀と南蛮銃を抜き取って、風音と勇を庇うように一歩前へと歩み出た。
「ゴホッ……あと一分で水柱様が来てくれます。さっきみたいに上手くいくか分からないけど、私が見た先を送るので避け続けて!夙の呼吸 弐ノ型 吹花擘柳(すいかはくりゅう)」
前に出てくれた玄弥の前に飛び出し放った風音の技は、鬼舞辻からもたらされた攻撃を跳ね返した……二人に危害を及ぼすものだけ。
「風音!……クソッ!風の呼吸 肆ノ型 昇上砂塵嵐!」
そこに更に勇の技が重なり、風音の体を傷付けていた攻撃を弾き飛ばす。
鬼舞辻の攻撃が止んだ隙に玄弥が何発もの銃弾をまだ見えぬ鬼舞辻へと撃ち込み、勇が風音の体を抱えて後ろへ跳躍した。
「ふざけんな!頼むから自分の身を守ってくれよ!俺のことは俺で何とかする……女の子が…… 風音が傷付くとこなんて見たくないんだ」