第14章 炎と風
「実弥!煉獄様!風音ガ鬼舞辻無惨ト遭遇シテイルカモシレナイ!ドウスル?!コノママダト風音ガ危ナイゾ!」
楓からの救援要請は各柱の鎹鴉によって、曖昧だった鬼の情報が正確な情報となり迅速に柱たちへと徐々に伝わっていった。
風音の師範である風柱の実弥へはもちろん、共に任務に赴いていた杏寿郎へも例外なく今し方伝わり、帰路へ着こうとしていた足を止めさせて二人は顔を見合せた。
「どういうことだァ?!何がどうなって……あぁっ、クソ!風音のところに案内しろ!」
爽籟と言葉の応酬を繰り広げたとしても現実は変わらない。
それを爽籟も嫌というほどに理解しているので、何も答えずに二人の前へと回り込み先導を始めた。
「今まで隠れ続けてたクソ野郎が動き出しただと?」
「自ら鬼殺隊剣士の前に姿を現したのは、俺たちが柱になってから初めてだな……爽籟、要。他の柱にもこの情報は回っているのか?」
いつの間にか杏寿郎の鎹鴉、要が爽籟の隣りに並び先導を開始したのでこの二羽には情報が回っているということ。
あとは柱の誰かが風音の任務地近くにいるかどうかが問題である。
「楓ガ初メニ会ッタ鴉ガ虹丸ダッタヨウナノデ、恐ラク既ニ情報ハ回ッテルハズダ。風音ノ元ヘハ一番近クニイタ冨岡様ガ向カッテイルガ……」
「遭遇するまでに到着出来る距離には誰もいねェってことかよ……」
実弥の沈んだ珍しく小さな声は杏寿郎だけでなく爽籟や要の胸を締め付け言葉を失わせる。
そんな中でも杏寿郎は実弥の肩にグッと力を入れた手を置いた。
「あの子は聡い女子だ。死なないよう、捕まらないように冷静に考えて行動しているに違いない。不死川、速度を上げよう。きっと風音は誰よりも君の到着を心から信じて待っている」
「……あぁ。煉獄、遅れんなよォ!途中でへばっても待ってやんねェからなァ!」
杏寿郎の言葉にいつも通りを取り戻した実弥は速度を上げた。
その背中を見て杏寿郎も速度を上げて風音に思いを馳せた。
「へばるわけにはいかない。あの子に礼を述べねばならんからな!」