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涼風の残響【鬼滅の刃】

第14章 炎と風


実弥たちに情報が行き渡る少し前、風音は救援先で鬼を瞬殺し剣士たちを自分から遠ざけるために逃がして、合流場所とは逆方向へと足を動かしていた。

「合流場所には行けない。さっきの場所に鬼舞辻無惨が現れるなら私だけに的を絞らせないと……でも楓ちゃんも側にいないから先が見えない……どっちに向かったら殺されずに鬼にされずに済むか分かんないよ」

任務の時には必ず楓や柱、他の剣士たちが側にいてくれた。
それが今は誰もいない。

殺される云々よりも人のために使うと決めた自分の能力が鬼の手に渡ることだけは避けたいのに、楓を通して見せてもらった未来は鬼の手に渡るであろうものばかり。

もう少し見れば幾つか避けられる未来が見えたのかもしれないが、時間に余裕がない状態では楓に柱の誰かを呼びに行ってもらうのが精一杯だった。

「どうしよう……正面から迎え撃っても勝てるわけがない。殺されて取り込まれず、尚且つ鬼にされるまでの時間を稼ぐ方法……全身に自分の血を纏うのは現実的じゃない、となると胡蝶さんが作ってくれた毒薬」

風音は鞄に手を当てて中に入っている鬼にとっての毒薬の本数を確認して木の上へと跳躍し身を隠した。

「とりあえず常中はやめておこう。毒薬……残りの本数は八本、体に振りかけるのは二本。あとは体内に……」

言うが早いか小瓶を二本を鞄から取り出して頭からかぶり、残りの毒薬を全て飲み干す。

「……よかった。私の体に異常は現れない。……実弥君、鬼舞辻無惨がここに来ます。師範のお顔に泥を塗るような事態にならないよう精一杯つとめます。どうか……朝日を一緒に眺められますように」

祈りを終えたと同時に辺りが騒音に見舞われた。
木々がなぎ倒され地面が抉られる音、この森の中に住む動物たちが逃げ惑う音や悲痛な鳴き声。

人だけでなく無意味に生ある者の命を躊躇いなく奪っているのは、風音を見つけ出すために姿を現した鬼舞辻無惨だろう。

「私のお父さんを鬼にして、お母さんを喰べた鬼を生み出した鬼……私の手で頸を斬ってやりたい。実弥君のご家族の仇、花ちゃんの仇」

怒りに震える風音へと騒音はゆっくり近付いてくる。

今にも勢いで飛び出しそうな体を必死にとどまらせ好機が巡ってくるのをひたすら待った。
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