第14章 炎と風
噂自体は
『柊木と任務に赴くと柱に同行してもらった時と同じくらいに被害が少なくなる。紡ぎ出す言葉はいつも的確で、非常に戦いやすく鬼を滅しやすい』
というもの。
言葉に関しては何を指しているのか分からない。
分からないものの……体格や醸し出す雰囲気を見るだけでは今まで何人か目にした柱には到底及ばない。
「どういうことだ?……やべ、行かなきゃ!出遅れちまった」
風音は鬼がいるであろう森の中へ走り去ったので姿は既に見えず、勇に関してももうすぐで森の中へ入るので早く追わなければそれすら見失ってしまう。
それだけは避けなくてはと玄弥も森へと向かって足を動かした。
「不死川さんは……やっぱり刀と南蛮銃を使って戦うみたい。しかも弾の命中率は完璧!となると……」
近くを飛んでくれている楓の先を見続けさせてもらい、どの未来よりも自分たちが一番被害の少ない未来を探って日輪刀を鞘から抜き出した。
「私は上から!夙の呼吸 肆ノ型 飄風・高嶺颪!」
飛び上った勢いで風音のキュロットが捲れ上がる……が、実弥が危惧していた太腿が露わになる事態には至っていない。
風に煽られようと回転しようと、キュロットの中には体の線にピタリと沿ったズボンのような物を身に付けているからだ。
実弥の縫製係である女主人曰く
『せっかく似合ってるのに勿体ないわ!中にこれを纏えばいいのよ!』
……と短いズボンのような物を手渡されてしまった。
実弥とお揃いにならなかった……と少し落ち込んだものの、戦い慣れた服装の方が良いだろうと実弥に言ってもらったので、これを身に付け戦うことにしたのだ。
それはともかくとして、風音の攻撃は七尺はあるだろうと思われる巨躯の鬼の腹を切り裂き怯ませることに成功した。
「立花さん!右斜め後ろから腕を、不死川さんは鬼の頭上から南蛮銃で攻撃して下さい!血鬼術は手から放たれる毒液なのでくれぐれもお気を付けを!」
「任せろ!不死川、行くぞ!」
さすが何度か風音と共に戦ったことのある勇の反応速度は早く、風音の言葉を疑うことなく鬼の背後へと回り込んで鬼の腕を切り落とした。