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涼風の残響【鬼滅の刃】

第14章 炎と風


頑固な風音と暫し沈黙の見つめ合い。

いつもとは逆の状況に風音が戸惑っているようで不安げに瞳を揺らせたまま実弥を見つめ続ける。

だが実弥はそんな風音の視線に対して音を上げることをしない。
その理由は言わずもがな、風音が鬼に対して有効な手段を使うべきだと言う度に、実弥はその主張を受け入れある程度は望むままにさせてやっているからである。

そして望むままにさせてもらっている自覚のある風音は、いつもの実弥の気持ちをこんなところで知ることとなると共に、実弥が絶対に引いてくれないと理解していた。

それもそのはずだ。
自分だけの主張を押し通し続けるなどただの傲慢なワガママになってしまうから。

風音は負けたというように視線を実弥から外して床へと落とし、今度は意を決した強い意志のこめた瞳で実弥の顔を見上げた。

「やってみる……ちょっと怖いけど実弥君ならどうにかしてくれると思うから。心の準備が必要なので試すのは明日から……」

「今日からに決まってんだろォ。俺は毎回心の準備なんてお前にさせてもらえてねェからなァ」

最もな意見にぐぅのねも出ないもののせめて明日からに……と黙ることで粘ってみるも、笑顔のまま実弥の目が血走ってしまった。

「返事ィ!」

「はい!やります、今日からやります!……実弥君の押しも意外と強い……」

「お前だけには言われたくねェ言葉だなァ。ほら、やってみろ」

何も言い返せず苦笑いを浮かべる風音に溜め息を零して手を握る。

こんな時だと言うのに風音は今の状況に……至近距離で見つめ合い手を握られるという状況に頬を赤く染めてしまう。
何を今更照れているんだ……と思いながらも、風音が手を握り返し準備を始めたので静かに見守り続けた。

「実弥君の今日の任務の様子を見ます。私もまだ二回目だから上手くいかないかもしれないけれど、もし実弥君の頭の中に流れ込んできて痛みがあれば突き飛ばしてほしい」

心配だと言わなくても分かるほどに眉を下げてしまった風音を安心させるように、小さな手を握る手の力を僅かに強めて笑顔を向ける。

「俺の心配より自分の心配してろ。風音が辛くなればすぐ離れろよ?」

風音は優しい笑みを向けてくれている実弥に頷き返した。
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