第14章 炎と風
という事で風音と実弥は少し足を伸ばし、自分たちの住んでいる街から少し離れた街へとやって来た。
ちなみに今から髪飾りを吟味する風音の髪型は上半分だけ結い上げ、器用にも小さなお団子をこさえている。
(あくまで団子に拘るんだなァ。何か意味でもあんのか?)
隣りを機嫌よく歩く風音の頭にある小さなお団子が気になって仕方がないようだ。
前を向いて歩きつつもチラチラと視界に入るお団子をどうしても目で追ってしまっている。
「なァ、その髪型になんか意味あんのか?」
そしてついに好奇心には勝てず問いかけると、機嫌がいいのだと誰にでも分かる笑顔で実弥を見上げてきた。
「ん?意味らしい意味はないよ!ただ村にいた時、伸びてきた金色の髪を隠しやすかったから。こうして頭に手拭いを巻けば隠せるでしょ?今は隠す必要ないんだけど、纏めてた方が私は戦いやすくて」
手拭いを前髪の生え際から襟足まで巻く動作をして笑う風音は事も無げに言っているが、幼い頃からあの村で生きるための苦肉の策を鬼狩りに生かしていると思うと実弥としては少々複雑。
しかし似合ってはいるので何も言わず笑顔を返し、綺麗に結い上げた髪が乱れないようにふわりと頭に手を置いた。
「そうかィ。なら簪とかがいいんじゃねェか?」
「うん!簪にする!えっと……あ!見て、あそこのお店!髪飾りいっぱいありそうだよ!実弥君に似合うものもあったらいいな」
弾んだ声で実弥の手を引きお目当ての店へと足を向ける風音に実弥から一言。
「俺に髪飾りつけさすんじゃねェぞ」
最もな一言に風音は振り返って更に笑みを深める。
つけさすつもりがあるのかないのか……この表情からは分からないが実弥が嫌がることを風音はしない。
それを実弥も分かっているからこそ風音に手を引かれるまま、望む店へと進む風音を止めることはしなかった。