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涼風の残響【鬼滅の刃】

第14章 炎と風


花街での任務を終えた次の日、お見送りするはずだった天元たちと共に結局蝶屋敷へと搬送されてしまった。

その蝶屋敷でしのぶからこってり絞られ養生し、なんだか炭治郎たちよりも厳しい機能回復訓練を日夜行い、風音の髪が肩より少し長くなった頃、ようやく実弥と共に屋敷へと戻って来た。

「実弥君、ヒイちゃんとラギちゃん……前よりお腹フクフクしてない?ヒイちゃんなんてもう少しでほっぺたかお腹か見分けつかなくなっちゃうよ」

「……悪ぃ。口開けて餌ねだられたら歯止め効かなくなっちまった。ヒイに関してはお前そっくりなんでなァ、つい甘やかしちまう」

そして帰ってきて一番に向かった部屋は二人の寝室。
そこで目にしたのは風音がいない間、実弥から存分に甘やかされたであろう金魚たちが見事に丸々と成長してしまった姿だった。

唯一無事なのはカブトムシのシナだけである。

「うん、私に似てるから甘やかしたくなってしまったっていう気持ちは凄く嬉しいんだけどね。ほら見て?実弥君の姿見たらご飯貰えるんだって確信してるよ……口パクパクしてるもん」

「仕方ねェだろォ……お前が家にいねぇからコイツら甘やかすしか出来なかったんだからなァ。だが……確かに丸々させ過ぎた。今日からやり過ぎねぇようにする」

気まずそうに頭をぽりぽりと掻く実弥が親に叱られてしまった子供のように見え、風音は心の中で悶絶し思わず笑顔で頭を撫で撫で。

「フフッ、でも私の分も可愛がってくれてありがとう。今日からこの子たちはご飯の量が適量になっちゃって悲しんじゃうかもだけど、これからは毎日一緒に育てようね」

年下の少女になんとなく子供扱いされてむず痒い気持ちになるものの、久方ぶりに元気な風音が出会った頃から変わらない笑顔でこの家にいるのだと思うと悪い気はしない。

「そうだなァ。まぁ甘やかせる対象が帰ってきたわけだし、コイツらの体もすぐ戻んだろ。風音、いつまでも頭撫でてんな」

放っておけば永遠と頭を撫で続ける風音の手を取り、今度は実弥がくしゃりと頭を撫でた。

「自分で切り落としたとは言え……鬼の目を惑わすために切っちまったって聞かされた時は、あの塵屑野郎をもっと切り刻んでやればよかったって思ったが、これはこれで懐かしい感じがして悪かねェな。髪飾りを買ってやる口実にもなった」
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