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涼風の残響【鬼滅の刃】

第14章 炎と風


しかし風音にとってはそんな理由如きのものではなく、深刻な問題だったらしい。

「宝物なんだとよ、お前ら柱が。あの村から出てお前らと出会って受け入れて貰えたことが嬉しかったらしい。目や髪の色や能力のこと、あとは鬼になっちまった父ちゃんの存在があっても受け入れて貰えたことが嬉しかったんだって……何度か聞いてた」

今は様々な傷を癒すために睡眠を取っている風音の寝顔を思い浮かべ溜め息が零れる。
眠っているのにも関わらず悲しげに赤く染まった瞼が痛々しかった。

「そんなことでか?なら嬢ちゃんの周り宝物ばっかじゃねぇか。まぁ、嬢ちゃんの戦い方は女がてらお前そっくりだから冷や冷やさせられたな!で、死んじまうんじゃねぇかって柄にもなく怖くなった。俺の過去と重なってな。何となく似てんだよ、俺の妹に」

忍一族の子として生を受けた天元の生い立ちを実弥はよく知らない。
妹がいたのだと言うことも今知った。
そして天元の口調や表情からその妹が既にこの世にいないことも。

「割り切ってたつもりなんだがなぁ。徐々に懐いて今じゃ顔を見れば当然のように笑顔で側に来てくれるからだろうけど、嫌だね。そんな子が瀕死なる姿見んのは」

「懐いてくる奴がそうなりゃ誰でも割り切れるもんじゃねェだろ。そうか、お前にも妹がいたんだなァ」

視線を天元から床に落とした実弥の頭の中に浮かんだのは可愛がっていた妹や弟の姿。
つられて床に視線を落とした天元の頭の中にも妹や弟が浮かんでいるのかもしれない。

先に視線を戻した実弥へと天元も視線を戻しニカッといつも通りの笑顔を向けた。

「意外か?それはそれは可愛い妹がいたんだぜ?……お?嬢ちゃんがこっち向かってきてんぞ!あ……壁にぶつかった」

壁にぶつかったと聞いた途端実弥は素早く立ち上がり廊下へと向かう。
そして天元の耳に聞こえたのは実弥を求めて小さな声で泣く風音の声と、それを宥め抱き寄せ抱え上げた音。

「俺も嫁たちが全力で愛しいがアイツも相当だなぁ。あの不死川がねぇ……柱就任した時にお館様に啖呵切った奴が今じゃ一人の女にゾッコンかよ」

小さな呟きはまだ廊下にいる二人の耳には届かず天元の独り言として部屋に消えていった。
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