第14章 炎と風
花街自体への被害は大きかったものの、人的被害は最低限に済んだようだと後から駆け付けてくれた隠たちに教えてもらった。
建物の被害を見る限り自然災害並のものだったので、人的被害をここまで抑えられたのは奇跡に近いものがあるとの事だった。
その人的被害を抑えられたのは救い出した天元の嫁たちの働きや、先に戦闘区域を離れた善逸や伊之助の働きも大きかったらしい。
元々避難誘導に駆け付けてくれていた嫁たちはもちろん、風音からただならぬ指示を受けた二人が危険を察知して戦闘区域付近にいる人たちを探し出しては出来る限り遠くへと避難させていたのだ。
戦闘も終了し被害状況を確認し終えて藤の花の家紋の家へ……と動き出そうとしたその時、天元からもたらされた言葉で小さな騒ぎが起こってしまった。
「基本的にお前は大きな任務の後泣いちまってんなァ……辛ェなら鬼殺隊なんて辞めちまえばいいのに」
現在、その小さな騒ぎがどうにか片付き各々が家主に与えてもらった部屋で体を休めている。
風音はと言うと毒と戦い数多の傷を負い先を何度も見届け、激しい戦闘を繰り広げた疲れから実弥の隣りで眠りについている……涙でまつ毛を濡らしたまま。
「だが今回もよく頑張ったなァ。風音はもっと誇っていいんだよ……」
その声に反応するように一筋の涙が流れ落ちてきたので苦笑いを零しながら拭いとってやり頭をそっと撫でると、実弥はゆっくり起き上がって部屋の出入口まで歩み寄り襖を音を立てないように開いた。
「休んでるとこ悪ぃな。嬢ちゃんどうだ?落ち着いてくれたか?」
涙は流したものの今は眠りについているので、来訪者である天元に頷き返して部屋を出て別室へと移動した。
「泣かせるつもりなかった……って言うよりあんなに泣くなんて思ってなかったんだ。俺が鬼殺隊辞めるって言っただけで泣いちまうなんて……」
数時間前に起こった小さな騒ぎとは、天元が鬼殺隊を辞めると言ったことにより風音が止めどなく涙を流したことだ。
なんでも自分が我儘をたくさん言って天元が呆れ果て、それが原因で辞めてしまうのだと勘違いしたかららしい。
……柱がそんなことで辞めるはずがないにも関わらず、とんだ勘違いである。