第13章 夜闇と響鳴
どこからこんな元気が出てくるのだろう。
体内は毒に侵され肋骨折はもちろん体に数多の裂傷のある重傷人なはずなのに、風音の様態は先ほどまでとはうってかわって元気になりつつある。
苦しむ姿なんて見たくはないので実弥にとって今の風音の様子は嬉しいが、やはり完全に不安は拭い取れない。
「好きなの買ってやるよ。だから早く元気なれ……じゃなきゃ家で待ってる奴らが寂しがっちまう。俺も……気が気じゃなくなるんでなァ」
実弥の言葉に嬉しそうに表情を綻ばせた風音に笑顔を返してから触れるだけの口付けを……したところでお馴染みの声が背後から聞こえてきた。
「竈門!お前は煉獄かよ!いっつも不死川と嬢ちゃんのいいとこで目ぇ塞ぎやがって!いいだろ、減るもんじゃあるまいし!」
「ダ、ダメですよ!不死川さんはそうでもないですけど、風音から驚くくらいに恥ずかしがってる匂いしますから!あ、善逸、禰豆子!ちょっと待て!」
さすがに後輩たちの前で口付けを続けることは出来ないと、顔を真っ赤に染めて目を回している風音から唇を離して声のした方へと振り返る。
するととんでもない……言い表しようのない表情をした善逸の顔が実弥の視界を埋めつくした。
それに怯むことなく軽く睨みつけてやるが、善逸はまったく堪えている様子はない。
「何だァ?何か言いてぇことあんなら言ってみろ」
「ありますよ!なんなんですか?!仮にもあんた柱でしょ?!後輩たちの前で……あんなことやこんなことするなんてーー」
重傷人の目の前で小競り合いが始まってしまった。
怪我や毒の影響からではなく恥ずかしさからふわふわする頭を必死に働かせ二人を落ち着ける方法を考えていると、幼子の姿となった禰豆子が風音の脚の上に上体を預けて見上げてきた。
「可愛い。……ね、お願いしてもいいかな?」
風音の願いを聞いた禰豆子は大きく頷いて風音の手を握りしめ……その様子を視界の端に入れた小競り合いをしていた二人もそこへと注視した。
「おい、鬼。何しようってんだァ?!」