第13章 夜闇と響鳴
実弥が隊服を脱がせている間、特に痛がる素振りを見せなかったものの、風音は顔だけでなく体まで赤くするので実弥はたまったものではなかった。
隊服を脱がせたとて晒しを巻いており腹と肩くらいしか見えないのに、まるで何も纏っていないかのように赤くなられたらいたたまれない気持ちになってしまったとか。
「肋は言わずもがな……腕の傷も相当ひでェなァ。俺の戦闘方法真似るからこんなになっちまってんだぞ?ったく……体内に入った鬼の毒で死なねぇなら少し休んどけ。聞きてェこと山ほどあるが先に怪我……治さなきゃなァ」
上弦の鬼を相手取っていたので身体中の怪我は仕方ない。
むしろ天元含め剣士全員が五体満足であることが奇跡中の奇跡であり実弥にとっても喜ばしい結果だ。
しかし実弥に頬をふわふわと撫でられ、無邪気にも和み喜ぶ目の前の少女の痛々しい姿を見ると素直に喜ぶことが出来ずにいる。
「お前は相変わらず呑気だなァ。眠くねェのかよ?」
「少し眠いけどそこまでは……私ね、持ってきてるだけの色々な解毒薬飲んだんだけど、あんまり効果はないみたい。でも……もうすぐ毒を焼き切ってくれる頼もしくて可愛い子が戻ってきてくれる」
「可愛い子……?てかお前、色んな解毒薬飲んで体に影響ねェのか?そこんとこ俺は分からないが……胡蝶がその事聞いたら怒るんじゃねェの?」
ぴきりと風音の体が固まった。
……つまり様々な薬を考え無しに服用するのはよくないと言うことだろう。
「……胡蝶に聞かれたことに対しては正直に答えろよ。怒られんの嫌だって誤魔化したら後でバレた時に大目玉くらっちまうぞ」
「はい……しっかり叱られてくる」
と言っているのに顔はあからさまにしょんぼりしており叱られたくないのだと表情が雄弁に語っている。
しのぶからお叱りを受けるのは確実だとしても、今は天元の言った通り実弥による風音への甘やかせ時間だ。
風音の短くなってしまった髪をするりと梳いてから耳にかけてやる。
「髪、短くなっちまったなァ。何でかは追々聞いてやるつもりだが、何か髪飾り買いに行くか。どんなのがいいか考えとけ」
「髪飾り?うん、実弥君と一緒に買いに行きたい。緑の髪飾りがいい!実弥君と私の日輪刀と同じ色の緑」