第13章 夜闇と響鳴
「私は……先が見えます。自分の体がどうなるか分かった上で起こした行動です。天元さんが……気を病む必要なんて全く……ケホッ、ないんです。大丈夫、私は死なないみたいなので」
どう見ても今の風音に回復の見込みなどないが、戦闘が終わった今先を見て死なないと言っている。
どうあって回復のするのか誰にも分からないが、それを今聞いてやるのは酷だと全員が思い口を噤んだ。
「……だとよ。ちょっとコイツと二人にしてくれ。手当てしてやんねぇと辛いだろうかならなァ」
毒に関してはどうにかなるのだろう……が、折れた肋骨や無数にある切り傷は手当てしてやらなくては悪化してしまう可能性がある。
そして手当てを行うには隊服を脱がせなくてはならず、まだまだ認めきれていない炭治郎を含め、長年共に柱として肩を並べて鬼狩りをしてきた天元に風音の肌を見せるなど実弥からすれば論外なようだ。
それを察した天元は苦笑を漏らしながら風音の頬から手を離し、炭治郎の肩に腕を回した。
「分かった!おら、竈門!嬢ちゃんに何か言いたいこともあるだろうが、今から実弥ちゃんによる嬢ちゃん甘やかせ時間だ!俺たちはそれが落ち着くまで我妻と嘴平連れ戻しとこうぜ!」
「甘やかせ……分かりました!不死川さん、ゆっくりしてください!俺たちは二人の捜索と念の為に鬼の様子を見てきますので!では!」
天元のからかいと、そのからかいをまともに受け止め真面目に返した炭治郎に実弥の頬に血管が薄らと浮かんだが、力なく自分の胸元に体を預ける風音の体調を慮ってフイと体ごと背けるだけにとどめた。
そして二人の気配が遠ざかるのを感じ取ると瓦礫と化した建物の物陰に移動して腰を下ろし、足の上に風音をそっと座らせてやった。
「はァ……服脱がせんぞ。ゆっくり脱がせるが痛けりゃすぐに……あのなァ、ここで顔赤らめんなよ!脱がしにくくなっちまうだろうが」
事もあろうかこんな場面で風音は頬を赤く染め実弥の胸元にぴたりと体を密着させてしまった。
風音が元気な状態でここが寝室ならば悪い気はしないが……状況が状況故に実弥の体に熱を帯びさせることは全くない。
「ケホッ……ん、だって改めて言われると少し恥ずかしくて。うん……もう大丈夫。お手数お掛けしますが、よろしくお願いします」