第13章 夜闇と響鳴
鬼の攻撃がおさまるまで風音はようやく大人しくその場で見守り、鬼が風音がぶちまけた毒に堪らず膝を着いたところで実弥が声を出した。
「お前はそこで大人しくしてろ。宇髄、竈門ーー!そいつの頸斬んぞォ!動けェ!」
そうして風音の返事を待つことなく男の鬼へと走り寄って技を放ち、間もなく鬼の頸は宙を舞い上い地面を転がった。
「終わった……上弦の鬼を倒せた。天元さんの目と腕も……無事みたい。あとは炭治郎さんだけ……渡さないと」
風音が先を見て、そして実際に目の当たりにしたのは炭治郎の額にあった傷が濃く浮きでて痣のようになった様だった。
自分の腕に出ている若葉色の痣とは色も形も全く異なるが、何となく同じ分類に属するものだと感じた風音は、再び鞄の中を漁り小さな紙の包みを取り出す。
「炭治郎さん!これを……飲んでみて下さい!」
もう動くことは出来ないと悲鳴を上げる体を懸命に引き摺り地面を這いずっていくと、何処も彼処も傷だらけの体を労わるかのように優しく抱き上げられた。
「運んでやるから動くな。これ……竈門に渡しゃいいんだろ?」
抱き上げてくれたのはやはり実弥で、安心感から一気に力が抜けていく。
しかしまだ体を休められないので、心配げに目をひそめた実弥にニコリと微笑み返し頷いた。
「うん、ありがとう。痣がね、出てたの。効果があるか確証はないけど、たぶん効果はあると思う。渡したい」
いつもの元気な姿とはかけ離れた風音を抱き締め直し、近くまで来ていた炭治郎へと向き直る。
「これ飲んどけ。何の薬かは帰ってから煉獄に教えてもらえ」
素っ気なく渡された紙の包みを受け取った炭治郎は言われた通り中に入っている粉を口の中へと流し込み、天元がしたように風音の側へと歩み寄った。
「宇髄、コイツの今の状況教えろ。動けねェほどの怪我負ってるよなァ?」
「……血鬼術の毒をくらってる。後は肋骨四本、数え切れねぇほどの切り傷。悪ぃ……俺の責任だ」
ギリギリのところで意識を保たせ苦しげに浅い呼吸を繰り返す風音の頬に触れ、天元はゆっくりと撫でてやる。
すると風音は小さく首を左右に振ってそんなことはないと示した。