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涼風の残響【鬼滅の刃】

第13章 夜闇と響鳴


「おい、竈門!絶対コイツを逃がすんじゃねぇぞ!」

「はいっ!宇髄さん、風音が……」

風音が毒に冒されているなど誰かに言われなくても天元が一番よく知っている。
目の前でその瞬間を目にしたのだから……

「集中しやがれ!嬢ちゃんは死なねぇって言ってたんだ、今はそれ信じて一刻も早くコイツの頸斬んぞ!」

これ以上話をして集中を削ぐわけにはいかないと、天元は会話を切り上げ炭治郎の前に出て男の鬼と刃を交える。

その合間を縫って炭治郎が攻撃を仕掛けていると、すぐ近くを派手な額当てを付けた鎹鴉が横切っていった。
言わずと知れた天元の鎹鴉、虹丸は他にはなにも目もくれず一目散に屋根の上から飛び降りようとしていた風音の頭の上に着地して、コツコツと額を何度かつついた。

「モウスグ不死川ガ到着スル!無茶シスギンナ!トノ事ダ!嬢チャンハココデ大人シク……」

「やっぱり師範来てくれてたんだ。虹丸君、師範の言葉を届けてくれてありがとう。あと少ししたら大人しくするから少し待って?虹丸君はここから上空へ……戦闘が終わるまで空で待っててほしい」

不確定な未来が虹丸によって確定した。
実弥が来てくれるのだと決まったのならば自分のすることは一つしかない、そう思えば行動は速い。

戸惑う虹丸を頭から掬い取り一度キュッと抱き締めると、空へと向かって解き放った。
そして鞄の中を漁って小さな瓶を取り出し胸ポケットに入れる。

(体痛いし気持ち悪い……でもあと少し。ふぅ……)

「夙の呼吸 玖ノ型 星の入東風」

天元と炭治郎の攻撃の合間を縫って攻撃を繰り出し男の鬼の前にふわりと降り立った。

「殺せねぇお前邪魔だなぁあ!引っ込んで……」

殺すも何も毒で瀕死に陥っているのだが……と心の中で思いながら胸ポケットから小瓶を取り出して、天元や炭治郎が決死の思いで付けてくれた傷へと中身をぶちまけた。

それが何かを知っているのは風音と、ここにいない実弥としのぶだけである。

そしてもう一人……液体をぶちまけられた男の鬼がそれが何なのかを身をもって味わい、苛立ちをぶつけるように風音を懇親の力で蹴り飛ばした。
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