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涼風の残響【鬼滅の刃】

第13章 夜闇と響鳴


「私だけでは今の鬼の頸は斬れません!お願い!」

半分まで刃を鬼花魁の頸へとめり込ますことが出来たが、それ以上は妙にしなって上手くきることが出来ない。

それを目にした善逸と伊之助は我に返って風音の元へと走り寄りながら技を放った。

(このままいけば頸は斬れる。でもその後が……あれ?実弥君がもうすぐ来てくれるの?よし、それなら)

「お二人共、あと少しです!頸を斬ったと同時に頭を抱えて北東へ全速力で走って!後ろを振り返らず、走れるところまで走って」

先が見える風音が言う言葉は何か意味があること。

そう理解している二人は返事をする余裕はなくとも胸の内で了承し、日輪刀の柄を握る手に力を込めた。

「夙の呼吸ーー」

「雷の呼吸ーー」

「獣の呼吸ーー」

それぞれがこの場で最適だと思われる技名を告げそれを放つと、鬼花魁の頸は高く宙を舞い伊之助の胸の中へと無事に辿り着く。

「技を使っても何でも走って!絶対に戻ってくるようなことを考えないで!」

「お前はどうすんだ?!お前も……」

「そうだよ!早く一緒にここから」

手を差し伸べてくれる二人に笑顔で首を左右に振って共には行けないと示し、北東の方角へと促すように背中をポンと押した。

「私はまだここですることがあるから。また後でお会いしましょう」

そう言って渋々この場を離れた二人を見送った風音は禰豆子をどうにか落ち着けた炭治郎へと歩み寄り、手を差し出して願う。

「炭治郎さん、男の鬼を一緒に倒してください。ここからは音柱様の指示に従って動きましょう。大丈夫……鬼の頸を斬ることが出来る未来は幾つも見えたから」

炭治郎の目に映る風音の顔色は青白く、差し出してくれている手は小刻みに震えてどう見ても万全の状態ではない。

ここですることがある……というのはこの場に残る理由の第一前提であったとしても、その次くらいの理由にこの場から逃れる力が残っていないのだろうと今の様態から感じ取れた。

「……分かった!俺が先に宇髄さんのところに行く。風音は少し落ち着いてから来てくれ!頼んだぞ」

「ありがとうございます。隙を見て合流します」

風音の手を取り立ち上がった炭治郎は禰豆子の入った木箱を背負い、天元と共に戦うために屋根から飛び降りた。
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