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涼風の残響【鬼滅の刃】

第3章 能力と剣士


「おい、お前が目ェ覚まさねェから爽籟が心配してんぞ。そろそろ起きろよ……おはぎ買っといてやったのに無駄になっちまうじゃねぇかァ」

食事処で半分食べ損ねたからと宿へと帰る道すがら、風音と自分用に二つ買ったおはぎは小さな文机にちょこんと置かれたままだ。

そのおはぎから風音へと視線を戻して自分もコロンと横になり顔を覗き込むも、やはり穏やかに眠り続けていて目を開ける気配は感じられない。

「はァア……薬作らねぇのか?重くなるからやめとけって言っても道具背負ってきたくせに、寝てたら持って来た意味無くなんぞ」

まさか駆け足になると思っていなかった風音は実弥の助言を跳ね除け袋にお薬製作道具一式を詰め込んで……道中ひっそり涙を流したのは2人だけの知るところ。
そんなパンパンに膨れた袋も今は部屋の片隅に置かれたままである。

起きていたなら何かしらの薬をせっせと作っていたであろう風音の額にかかる前髪をふわりと梳いて、実弥の手がそこで止まった。

「コイツの髪色……黒じゃねェのか?」

梳いたことにより露わになった普段は隠れている一房の髪は、薄暗い部屋でもはっきり認識出来る淡い金色だ。

「……そうでもしねェと、あの村で生きれなかったのかよ。勿体ねェ、綺麗な色してんのによォ。染めてくれんなって言えば……」

「お邪魔しまーす。あら、不死川さん、夜這いは感心しませんね」

ガバッ!

優しげに目を細めて風音の髪を撫でていた実弥は、今し方部屋に響いた声に即座に反応して起き上がり立ち上がった。
声のした方を恐る恐る振り返ると、ニコニコと微笑むしのぶと……無表情で立ち尽くす義勇の姿が目に入る。

そして爽籟は当たり前かの如く義勇の肩から風音の枕元へと静かに舞い降りた。

「普通部屋入る前に声掛けねェかァ?!てか何で冨岡までいやがんだ……俺が呼んだのは胡蝶だけのはずだがなァ」

恨みがましく爽籟を見遣っても、爽籟は風音の頬に顔を擦り寄せて知らんぷりである。

「この街には大きな薬屋があるので、暇を持て余してる冨岡さんに買ったものを持ってもらおうと付き添ってもらっていたんです。それよりも……風音ちゃんの容態は?まだ眠ったままのようですね」
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