第13章 夜闇と響鳴
その頃、風音は少し前に合流を果たした禰豆子や炭治郎と共闘していた。
「風音!俺は宇髄さんの方に行く!禰豆子と頑張ってくれるか?」
「はい!恐らく大丈夫かと思います!その時になれば呼ぶかもしれないけれど!」
その時……と言うのが何を示すのかは炭治郎は分からない。
先を見ている風音が説明する時間もないし、帯に翻弄されている今では無闇矢鱈と日輪刀から手を離して炭治郎に触れることも出来ない。
今の状態では上手く伝える時間が取れないのだ。
それを炭治郎も分かっているのだろう……今は深く聞かないことにして風音と鬼花魁が戦闘を繰り広げている屋根を踏み締め、天元が戦闘をしている地上へと身を躍らせた。
「分かった!禰豆子、風音を頼んだぞ!」
「んむ!」
襲いかかってくる帯を避けつつ隙を見て爪で切り裂く禰豆子の姿は、汽車の中で見た本来の年齢と思われる背格好だ。
動きも速く周りもよく見てくれているので風音にとっては凄く共闘しやすい相手である。
「禰豆子さん、私がどうなっても気にしないでね?大丈夫、私は絶対に死ぬことはないから!」
「……むぅ」
少し不満そうな声が漏れ出た。
戦闘中であっても可愛らしい禰豆子に苦笑いを零し、これから自分に襲いかかってくるであろう攻撃に備える。
「夙の呼吸 弐ノ型 吹花擘柳」
上下左右から襲いかかってくる帯をどうにか弾き飛ばすと、先ほどから決定打をうてない鬼花魁が癇癪を起こした。
「ちょこまかと鬱陶しいわね!さっさとくたばれ、不細工共!」
「……鬼の形相してる鬼に言われたくないな。禰豆子さん、防御体制を」
「血鬼術 八重帯斬り」
「風の呼吸 肆ノ型 昇上砂塵嵐!」
まだ防御体制の整っていなかった禰豆子の前へと滑り込み、幼い頃に父親に人を守ることも出来る技だと教えてもらった技で禰豆子に鋭い帯が届くのを防いだ。
しかし風音は柱でも何でもない一般剣士である。
辛うじて禰豆子を守れたとしても、自分の体まで守り通すことが出来なかった。
任務の度に幾度となく見てきた赤い飛沫が夜闇を彩り、風音の視界をその色に染める。
(先が見えても体がついていかない……死ぬほどの傷じゃないからまずは禰豆子さんを)