第13章 夜闇と響鳴
「爽籟……確かまだ花街まで距離あったよなァ?ここまで聞こえてくる爆音……宇髄の技に思えるんだが」
花街から遠く離れた任務地から遥々駆けてきている実弥の耳に爆音が飛び込んできた。
それは隣りを飛んでいる爽籟にもしっかりと届いており、言われるまでもなく羽を動かす速度を上げた。
「宇髄様ノ技ダナ。戦闘ガ既ニ始マッテイル……恐ラク風音モ……」
「クソ、間に合わなかったか。おい、俺より先に行って情報を」
「不死川!オ前ノ愛シイ嬢チャンガ戦闘ヲ開始シテンゾ!右腕ニ痣発現!アト見タ先ヲ伝エタイ相手ニ触レルコトニヨリ、ソノ情報ヲ相手ノ頭ン中ニ流シコムコトガ出来ルヨウニナッテイル!体ニ影響ナシトノコト!」
爽籟を飛ばし先に情報を仕入れてきてもらおうと思っていたが、天元は実弥が駆け付けるに違いないと踏んで自らの鎹鴉、キラキラな額当てを付けた虹丸を飛ばしてくれていた。
とても有難いことなのだが、もたらしてくれた情報が情報なので素直に喜べず実弥の顔は一際険しさを増した。
「どうなってやがる!痣は想定内として……相手の頭ん中に流し込めるとか何だァ?!師範がいねェとこで勝手に進化しやがって……虹丸、あと少しで俺も現着する!風音に無茶すんなって伝えとけェ!」
「……夙ノ呼吸、隊服ヲ新調スルコトヲ勧メル!嬢チャンヘノ言伝、確カニ受ケトッタ!」
ふわりと虹丸は空高く舞い上がり、複雑な表情をした一人と一羽を置いて花街へと急ぎ戻っていく……
「実弥……大丈夫カ?」
「あ"ぁ"?!大丈夫もクソもあるか……宇髄の鎹鴉にまで心配されるアイツの隊服なんて知ったこっちゃねェ!クソ……だから早く新調しろっつっただろうが」
ぴらりと捲れ上がる風音のキュロットを思い浮かべ……実弥の額や頬、首筋にまで血管が浮き上がり目まで血走ってしまった。
「ただ……まだアイツは元気に飛び回ってんだろ。隊服はともかく生きてんならそれでいい。爽籟、遅れんなよ!」
風音の貞操はともかくとして、実力的に遥かに格上である上弦の鬼を相手にしている風音を死なせないよう、実弥と爽籟は静まり返った夜の街を駆けていった。