第13章 夜闇と響鳴
とりあえず天元は部屋の中で鬼と向かい合うようにしゃがみこみ、どうにか行動を止めて自分を見つめてくる風音の瞳を見つめ返した。
(なんでうちの姫さん方はこうも逞しいのかねぇ。胡蝶も甘露寺も……俺の嫁たちも嬢ちゃんも男顔負けだっつぅの。不死川、悪ぃな。嬢ちゃんの不思議な新技遣わせてもらうぞ)
実弥がこの場にいればどうしていただろうか。
新しい能力に加え天元の瞳には若葉色の痣が映っている。
莫大な力を得る代わりに寿命を縮めると言われている痣。
実弥からもたらされた話によると、風音自身は寿命が縮まっていないはずだと主張していたとのことだった。
しかしどこにもそんな保障などなく、実弥が心を痛めているのは容易に想像出来た。
その実弥がここにいたとして……やはり風音の言葉を信じ好きにさせたかもしれない。
させないと風音が本領を発揮出来ないと知っているから。
「はぁ。よし、嬢ちゃん!俺が全責任を負ってやるから好きにやってみろ!間違いなく嬢ちゃんのその力は俺たちにとって益になるからな!」
「はい!では私が見たものを早回しで送り込みます。でも……禰豆子さんは大丈夫なので心配しないで下さい!いきますね?」
鬼に触れ何を見たのか……送り込まれて天元がようやく理解した。
「ふぅん、鬼の妹がねぇ。ま、嬢ちゃんがどうにかなるってんならどうにかなんだろ!おっし、じゃあ未来通り嬢ちゃんは鬼花魁の相手を頼む!アイツらが到着するまで俺は男の鬼の相手だ。いいか、離れすぎんなよ?頸斬る頃合を合わせなきゃなんねぇからな!」
何だかんだでいつも柱たちは風音を好きにさせてくれる。
それもこれも実弥の口添えがあってこそのものだと理解している風音は、呆れ溜め息を零しながらも背中を支え押してくれる実弥に心の中で感謝して頷いた。
「かしこまりました!しつこいかもしれませんが、男の鬼の毒にはくれぐれもお気を付けて。体に入ればほぼ死は免れません。私なら……どうにかなるかもしれませんが」
どうにかなると思っているということは、天元に毒の刃が届きそうになれば身を呈して守ろうとしているということ。
「勘弁してくれよ!俺より自分の身の心配してくれ!」
「……あ!音柱様。男の鬼が姿を現しました。では共闘、よろしくお願いいたします!」