第13章 夜闇と響鳴
どうやら天元にはウケがよかったらしい。
どちらかと言うと実弥よりも地味な戦い方に分類されるが、容赦なく刃を振るった姿は天元のお眼鏡にかなったようだ。
「なるほどねぇ、鬼に対しては意外と好戦的って聞いてたが事実だったってわけか!だが嬢ちゃん、一旦俺の後ろに下がれ。んで俺にさっきのこと教えろ」
「好戦的……というほどでもありませんが。少し待ってくださいね、念の為に血を流し込んで動きを止めますので」
念の為で毒を流し込まれたら鬼花魁からすればたまったものではない。
しかしどういう訳か手も足も思うように再生出来ず、自慢の牙や爪……帯を出して抗うことすら出来ない。
そして再び頸から血を流し込まれもんどりうっていると、風音は感情の籠らない瞳でその姿を一瞥して天元の後ろへと下がった。
「……嬢ちゃんの血、派手にエグイな!俺もそんな血がほしかった……ってそれよりだ!嬢ちゃんは自分が見た先を俺らの頭ん中に流し込めんのか?不死川にも話してなかったのか?」
やはり先ほど天元と伊之助が驚いていた理由は、風音の見たであろう先の映像が頭の中に流れ込んできたからだったらしい。
しかし風音とてそんなことが出来るなどと思ってもみなかったので、首を傾げて体をふるりと震わせた。
「い、いえ。私自身そんなことが出来るだなんて知らなくて。ただお二人に私が見えた先を共有出来ればな……と思っただけだったので。でもそれが出来るなら使わない手はないですね!音柱様、手を……」
「ちょっ……と待て!眠気は?!他に何か体に影響はないのか?!動けなくなったら元も子もねぇだろ?!」
窓から部屋の中へ入ってきた天元の手を握りしめようとした風音の頭を掴み、跳ねっ返りな行動を強制的にとめさせた。
その間も鬼の苦痛な悲鳴は続いており、二人は同時に顔を顰めた。
「嬢ちゃんの行動には度肝を抜かれるが、鬼の悲鳴は派手に耳障りだな……で、嬢ちゃん。体に影響は?」
「ん……耳が痛いですね。えっと体に影響はないと思います。ただ私の見えたものを皆さんにお伝えするだけのものなので。音柱様、これは皆さんの力になり得るものですか?」