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涼風の残響【鬼滅の刃】

第13章 夜闇と響鳴


風音の願いは届かず、数里先まで届くのではと思えるほどの悲鳴が響き渡った。

今でも実弥の任務に同行させてもらっては先を見続けている。
しのぶからはやはり先を見る度に毒の濃度が高くなり、それに伴って鬼に付けられた傷に限り回復が早くなっているとの検査結果を教えてもらった。

しかも不明なことの多い痣が発現してからは傷の回復速度は顕著で、よほど深い傷でない限り翌日には綺麗さっぱり完治してしまう。

ともあれ今の風音の血の鬼に対する毒の濃度は初めの頃とは比べ物にならないほどになっており、鬼花魁が上弦の鬼と言えど効果は悲鳴とのたうち回っている姿が物語っている。

「あんたはどれくらい人を食べたの?何度悲痛な叫びを聞いて、絶望に染まる顔を何度見てきたの?……こんな苦しさなんかじゃ足りないくらい人を喰べてきたんでしょ?悲鳴なんて上げないでよ」

目の前の鬼は散々人を苦しめ命を奪ってきた。

いくら血を吐きもがき苦しもうが同情する余地などないし、当然の報いでしかないはずなのに……

「うるさい!ゲホッ……奪われるなんて真っ平よ!アタシは生まれ変わっても鬼になってやる!鬼になって全部奪ってやるんだから!」

もがき苦しむ姿に胸の痛みを覚えていた風音から、綺麗さっぱり痛みを吹き飛ばしてくれた。

今まで様々な鬼と対峙してきたが、ここまで清々しく鬼であることに誇りを持っている鬼と相見えたことが初めてな風音は、日輪刀を強く握り直し畳に投げ出されている白い脚にそっと刃をあてがった。

「私も奪われるなんて真っ平御免。じゃあ奪われたくないもの同士……鬼対人間で勝負しましょ?」

にこりと笑みを浮かべて頸の上へと翳していた腕を元の位置に戻し、その手も日輪刀の柄へと持っていく。

「夙の呼吸 壱ノ型 業の風」

鬼の膝から下の右脚が宙を舞い畳に落ちた。

……実弥は喧嘩をするように鬼と戦うのでその気迫に恐れ慄く者が後を絶たないらしいが、本格的に怒りを露わにした風音の戦う姿はなんと言うのだろう……後引く……見たものにトラウマを与えかねない戦闘方法だ。

頸を落としても死なない鬼を足止めしているので仕方がないかもしれないが、ジリジリと追い詰める姿は……

「派手だなぁ、嬢ちゃん!いやぁ、そこまでやれるとは思ってなかったわ!」
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