第13章 夜闇と響鳴
笑顔から真剣な表情で言った後に頭から手を離した天元の手を握って制止させた。
「私は大丈夫ですよ!それよりも竈門……えっと、炭治郎さんがまだ到着してません。待たなくていいのですか?」
風音の知る限り善逸と違い炭治郎は待機を命じられてはいなかった。
それなのに炭治郎は未だに到着しておらず、また天元も伊之助もその事について全く気にしていない様子である。
首を傾げ見上げてくる風音に天元は思い出したようにハッとして炭治郎の状況を説明した。
「悪ぃ悪ぃ!コイツと話してたら言うの忘れてた!竈門は保護した鯉夏花魁を藤の花の家紋の家に運んでんだ。もう指示は出してるから問題ねぇ!何も気にせず派手に暴れてこい!合流したらすぐに俺のド派手な技見せてやる!」
「かしこまりました!何の心配もなく鬼と戦い、音柱様を始めとして皆さんと合流出来るのを待っています。お二人もどうかお気を付けて……ド派手な技、楽しみにしていますね!」
「俺の技も見せてやる!待ってろよー!」
天元と天元の小脇に抱えられた伊之助の笑顔に笑顔で返し、風音は頭を下げてから二人の手を握り締めて置き土産を残す。
「奥様たちは閉じ込められている地中の空洞の至る所から垂れ下がっている帯の中に取り込まれているのですが……お二人が突入して十一時の方向と七時の方向に垂れている……」
垂れている帯が一本や二本ならば伝えるのは容易いのだが、風音が見ている先に見える帯の数は数えるのすら手間となるほどに多い。
(もどかしい……私の見えてるものがお二人の頭の中に送れたらいいのに。なんて説明したら伝わるんだろう)
言葉を途中で止めた風音に不満を漏らすことなく笑顔で待ってくれていた二人の表情は……伊之助に関しては猪の頭を被っているのではっきりとは判別できないが突如として驚きに満たされた。
「嬢ちゃん……これ……嬢ちゃんが見せてんのか?こんなこと出来るなんて不死川から聞いてねぇって!いや、今はいい。後でちゃんと聞かせろよ!じゃ、また後でな!」
「おい!頭ん中に……おっさん!何か頭ん中流れてきてたぞ!」
戸惑い声を上げた伊之助を地面に落とした天元は片手を上げて風音に別れの挨拶を済ませ……戸惑っている風音を背にしてあっと言う間に姿を消してしまった。