第13章 夜闇と響鳴
招集はそれぞれの鎹鴉によってもたらされた。
「楓ちゃん、もう皆集まってるの?」
合流場所は鬼の潜伏先である京極屋から少し離れた花街の外れ。
炭治郎たちがそれぞれの店にいたならば既に到着しているはずで、距離的に離れていた風音が一番遅く到着する予定である。
ちなみに善逸は京極屋で準備を済ませて待機しており、風音が戻り次第避難誘導に尽力するよう天元から命じられている。
「イイエ、竈門サンガマダ到着サレテイナイヨウデス。嘴平サンハ到着シテ宇髄様ト待機シテイルトカ……ア!アソコデス!」
風音に遅れることなくすぐ隣りを飛ぶ楓の視線の先を追うと、楓の言った通り天元と伊之助が何やら騒ぎながら待っていた。
「お待たせしました!どうしましたか?何か……」
「お、嬢ちゃん早かったな!コイツさぁ、俺が祭りの神だっつったら『俺は山の王だ!』とか言いやがんだよ。コイツの思考回路どうなってんの?」
どうやら緊張感の欠けらも無い会話を繰り広げていたらしい。
上弦の鬼との戦闘を前にしては緩すぎる会話なのだが、風音は両手を胸の前でぐっと握り目を輝かせた。
「素敵ですね!お祭りの神様と山の王様がいれば百人力です!帰ったら実弥君に自慢します!神様と王様と一緒に上弦の陸を倒したんだよって」
それぞれが恥ずかしげもなく真剣に言っているので、誰も止める者はいないし……何だったらほわほわした空気が流れてしまった。
「嬢ちゃんいいねぇ!まぁ、不死川がここにいたらぶん殴られてそうだけどな!よし、じゃあ早速だが嬢ちゃんは京極屋戻って鬼の足止め頼むぞ!嘴平……山の王は祭りの神こと天元様と嫁の救出に向かう!」
「ちょっと待て!何でコイツが鬼と戦うんだよ!俺様が行く!」
若干の駄々をこね京極屋へと走り出しそうになった伊之助の頭を鷲掴みにしてから自分の脇に抱え、出陣準備を整えつつ未だに目をキラキラさせている風音の頭をポンと撫でた。
「説明しただろ?嬢ちゃんは鬼の先が見えんだ。それにお前らより早く鬼殺隊入って尚且つ不死川の継子で階級は甲ときた!足止めしてもらうには十分だ!……頼んだぞ、嬢ちゃん。嫁たちを救出したらすぐに合流すっから」