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涼風の残響【鬼滅の刃】

第13章 夜闇と響鳴


辿り着いた藤の花の家紋の家の主人に混乱している女将を預けて早々に花街へと戻っていった。
いきなり鬼殺隊だの鬼だの聞かされれば混乱するのも当然だが、ここで女将に寄り添い気持ちを落ち着けてやる時間は風音にはない。

時間が経てば経つほどあの気絶させた男性客が目を覚まし、意味の分からない長い髪の束に絶叫し騒ぎ出す可能性が高くなるからだ。

「とりあえず女将さんは行方不明として匿ってて貰うとして……あのお客さんどうしよう?可哀想なことになりそうな気がして仕方がない」

元々下働きの人間として買われた風音の腕を引っ張り部屋に連れ込もうとしただけでも良くないのだが、部屋に連れ込んだ?その少女の髪が短くなっているなど大問題に繋がる事案である。

「……出入り禁止にならないようにだけ計らって差し上げないと。ん?でも今後のことを考えると出入り禁止になった方がいいのかな?分からな……っ?!」

京極屋へと続く道を鬼の気配を辿りながら疾走していると、突然横路地から強い力で腕を引っ張られた。
鬼の気配は近くにないはずなのに……と慌てて引っ張られた方を仰ぎみる。

「あ……音柱様。こ、今宵は月が綺麗ですね」

「口説き文句言ってる場合かよ?!月もう沈みかけてるし!てか何やってんの?!いきなりあんな言葉残されても訳わかんねぇだろ……」

どうしてだろう。
風音が動くと基本的に柱から叱られてしまう。

それでも叱られて当たり前のことをした自覚はあるので、ほんの少しシュンとしながら頭を下げた。

「すみません。女将さんが上空から鬼花魁に落とされてしまったので、救うために鬼花魁に正体がわれてしまわないよう変装して飛び出して受け止め、藤の花の家紋の家に送り届けていました」

そう言えば変装したままの格好だと思い出した風音は簡単に羽織っていただけの着物を脱いで畳み、手拭いを頭から外して……天元が驚き肩をビクつかせる。

「おいおい!やっぱあの部屋の布団に落ちてた髪、嬢ちゃんのだったのかよ!」
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