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涼風の残響【鬼滅の刃】

第13章 夜闇と響鳴


「あんた、何を……」

女将の言葉を遮るようにニコリと笑い、風音はもう一度手をキュッと握り締めてから二階へと続く階段の方へ足を向けた。

「許せない……なんの罪もない人を手にかけるなんて。絶対にあんたになんて殺させないんだから」

先ほどの笑顔は幻だったのでは……と思うほどに風音は実弥でも見たことがないくらいに表情を険しくさせて階段を上った。





「うわぁ……思っていた以上に散らかり方が盛大。でもこれくらいなら五分あれば十分か。皆さん、一緒にお片付け頑張ろうね」

かと言っていつまでも表情を険しくなんてしていられない。
敵意を剥き出しにして鬼の部屋を片付けてしまえば鬼に自分が鬼殺隊剣士だと感づかれる恐れもあるし、何より花魁付きの禿である三人の幼い少女を怖がらせてしまうからだ。

「あ、はい!ありがとうございます!すごく助かります!」

「三人だとなかなか終わらなくて、いつも叱られてしまうんです。風音さんがこのお店に来てくれて嬉しい!」

綺麗に髪を結い上げた可愛らしい少女たちに風音は既に胸を撃ち抜かれている。
どうしてこんなに可愛らしい少女たちに手をあげられるのか…… 風音には全く理解出来なかった。
まぁ、相手は人間のことを餌か砂粒程度にしか考えていないので、風音に理解出来るはずもないのだが。

「私も貴女たちみたいな可愛らしい子たちと一緒にお仕事出来るなんて嬉しいです。さぁ、花魁がお戻りになる前に片しましょ。(鬼だけど!)花魁のお部屋は綺麗にしておかないといけませんしね」

心の声は奥底にしまい、頷き返してきてくれた禿たちと部屋の片付けを開始した。

普段数多くの薬草や薬の保管や整理を行っている風音からすれば、こんな部屋の散らかりなど大したものではない。
しまう場所が分からないものは禿たちに教えてもらい、宣言通り五分後には完璧に片付けを終わらせることが出来た。

「お疲れ様です!さぁ、貴女たちは芸事のお稽古がありますよね?後のことは私に任せて下さい」

「わぁ!ありがとうございます!」

「こんなに早く終わったの初めてです!花魁に褒めてもらえるかな?」

思い思いに喜び手を取り合う禿たちへ、普段花魁から辛い思いをさせられているせめてもの労いに小さな包みをその小さな手に握らせた。
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