• テキストサイズ

涼風の残響【鬼滅の刃】

第13章 夜闇と響鳴


それに女将は売られてきた女性たちの受け皿となっているだけなので、目の前の女将に苦言を呈することが出来るわけもない。

それに女将が手を焼いているという蕨姫花魁は風音が先を見て見つけた女の鬼だ。
女将の機嫌を損ねて話が白紙に戻ってはいけない。

「その蕨姫花魁の付き人……みたいなことをすればいいのでしょうか?すみません、私……少し前まで親元で過ごしていたのでお仕事の勝手などが分からないんです」

「付き人と言うより花魁が癇癪を起こしたら、下の子たちを他所に逃がしてやってくれないかい?ちゃんと仕事は教えるし、もちろん下働きもしてもらうことになるけど」

風音にとっては願ってもない仕事内容だ。
胸にくすぶる痛みは自分の中へ押し込み、天元に力を見初められここに来た責務を果たすことにした。

「かしこまりました。そのお話、ぜひとも受けさせていただきたく思います。でも先ほどの男性が戻るまで少しお待ちいただけますか?商品である私が勝手に消えるわけにもまいりませんので」

「ああ!構わないよ!店の者にも話しておくから、色男が戻ってきたら店に来ておくれ!待ってるからね!」

……本当に鬼……いや蕨姫花魁に手を焼いていたのだろう。
女将は目に涙を浮かべるほど喜びながら手を振り店へと戻っていってしまった。

「鬼だもんね、気性が荒い云々の前に人を食料か道に転がる砂粒程度にしか思ってないからね。女将さんも手を焼くに決まってる……さて、無事に就職先が決まったことを天元さんに伝えなくちゃ」

天元と別れてからそれなりの時間が経過している。
嫁の一人である雛鶴を既に保護し、こちらにむかってきているはずだ。

「楓ちゃんに言伝お願いしたいけど……人がそれなりにいるから目立ちそう。天元さん……雛鶴さんと無事にいてくれればいいけど」

何かの商店の壁に背を預け地面に視線を落としたと同時。
待ち望んでいた元気な天元の声が聞こえた。

「嬢ちゃん待たせたな!雛鶴は無事に保護できた!今は藤の花の家紋の家で休ませてるが、直ぐに回復するはずだ!……何、そのやる気に満ちた顔。派手に嫌な予感がするんだが」
/ 985ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp