第13章 夜闇と響鳴
「実弥!風音ハ遊郭ヘノ潜入ハ叶ワナカッタ。顔ニ傷痕ヲ施シタヨウダガ、髪色ヤ瞳ノ色ガ珍シク客受ウケガイイト女将ニ言ワレタラシイゾ」
風音が一人で見張りをしてしばらく経過した頃、実弥の元に鎹鴉たちの情報網を存分に使った爽籟から風音の現在の情報がもたらされた。
「予知使ってなかったのかァ?まァどっちにしてもアイツの髪や目は何か人を惹きつけるみてぇだから、女将の言うことも分からんでもねぇけど」
多くの時間を使い風音に男客への対処法を伝えたことが無駄になってしまったが、それに対して気を揉む必要のなくなった実弥はこっそりと安堵の溜め息を零した。
「爽籟、それはともかくとして鬼はいつ動き出す?その日に俺の任務入ってんのかァ?」
「……鬼ハ二日後、動キ出スト聞イテイル。実弥ハ明日カラ遊郭トハ程遠イ場所デ任務ガ立テ続ケニ入ッテイルカラ向カエナイ……」
風音が大きな任務に赴く度に実弥は駆け付けてやれない。
決して天元や風音の力量を疑っているわけではないのだが、やはり大きな危険が伴う任務先には駆け付けてやりたいと思ってしまうのだ。
「そうかィ……爽籟、二日後の任務が終わり次第、遊郭近くの藤の花の家紋の家に案内しろ。戦闘に間に合わねェにしても迎えに行くくらい出来るからなァ」
未だに合同任務となると風音は多くの傷を負って帰ってきてしまう。
つまり今回の任務でもまず間違いなく多くの傷を……身も心にも負うはずなので、側で寄り添ってやらなくてはならないのだ。
「望ムトコロダ!俺モ風音ト楓ガ心配ダカラナ!マタ情報ガ入レバ知ラセル!」
実弥の任務前だと言うのに爽籟は風音たちの情報を集めるために空へと羽ばたいていってしまった。
かと言って任務の時にはしっかり戻ってきてくれるので、特に実弥は気にしていない。
「一人で鬼とやり合う……なんて宇髄に言ってなきゃいいが。……もし言ってたらアイツ、そのうち柱の誰からも一緒に任務行きたくねェって言われんぞ」
さすが長い時間共に生活を送り任務をこなしてきただけではある。
的確に風音が言った言葉を言い当てた実弥は、爽籟が飛び立っていった空を見つめたあと、自らの任務の準備を進めていった。