第13章 夜闇と響鳴
結果。
炭治郎は花街の中を花魁道中していた美しい花魁、鯉夏を鬼から守るためにときと屋へ。
伊之助は既にある場所へ攫われてしまった天元の嫁たちを天元とは違う方面から救うために荻本屋へ。
善逸は激戦の渦中となる場所で中にいる人々を避難誘導させるために京極屋へ貰われていった。
「嬢ちゃんの顔全体を作り替えときゃよかったなぁ。傷痕だけなら遊女としてその日から問題なく客を取らせられる……なんて言われると思ってなかった。悪ぃが嬢ちゃんは俺と外で待機だ」
珍しい瞳や髪色は客受けがいいらしく、大きな傷があると言えど遊女として立派に務めを果たせる……と潜入予定だった京極屋の女将に太鼓判をいただいてしまった。
それにより風音は潜入捜査組からあぶれてしまい、天元と共にひっそり遊郭の屋根の上で待機中である。
「いえ、こちらこそ正確な情報をお伝え出来ず申し訳ございませんでした。今までこんなことはなかったのに……どうしてでしょう」
「え?未来なんて俺たちの行動一つで簡単に変わっちまうもんだろ?特に今回のように大人数の人間が関われば小さいはずのズレも大きくなる。気にすんな!嫁たちがいる場所、鬼の居場所、鬼の特徴は変わりようがねぇ!おし!俺は雛鶴の救出に向かうから、嬢ちゃんはここで鬼の見張りをしててくれ!」
しょんぼりと落ち込む風音の背をポンと叩き天元は立ち上がって……天元の嫁の一人である雛鶴がいる切見世という花街で最下層に当たる店が立ち並ぶ場所の方角へと体を向けた。
「天元さん、お店の中には雛鶴さんと……あと少しで動き出す鬼の分身?みたいな帯がいます。柱である天元さんならば手間取る相手ではありません。でもどうかお気を付けて」
無事に天元が雛鶴を救出する先を見たが、その通りに未来が進むとは限らないのだと身をもって知ったからこそ、風音の瞳は心配そうに揺らめいてしまった。
そんな風音の頬を天元は向き直ってから優しく撫でニカッと笑顔を向ける。
「鬼の分身ごときに俺が遅れをとるわけないだろ?不死川みてぇに嬢ちゃんを元気にしてやれないのは心苦しいが……信じて待っててくれな!」
「お気遣いありがとうございます!もう大丈夫です!お帰りをお待ちしています!」
無事に笑顔を取り戻した風音に頷き返し、天元は雛鶴の元へと駆けていった。