第13章 夜闇と響鳴
長い期間生活を共にし多くの任務をこなしてきた実弥でさえ快諾しない手段を、今日初めて共に任務を遂行する天元にどうやって許可を出せと言うのか……
(不死川……お前の大好きな嬢ちゃんは俺の手に余る……どうしたもんかねぇ。今から不死川呼ぶわけにもいかねぇしなぁ……)
鬼を狩ることが生まれ持った使命だというように毎日日輪刀を振るう実弥の可愛がる少女なので、手に余るのは仕方のないことだろう。
だが手に余るからといって柱である天元が、わざわざ実弥を説き伏せて連れて来た風音を上手く誘導出来ないなどあってはいけない。
日々手を焼いているであろう実弥や、汽車での任務で肝を冷やし手を焼いたと思われる杏寿郎に思いを馳せながら風音の手を握りしめた。
「嬢ちゃん、最後に一つ聞かせてくれ。それは考えなしに言ってんじゃなく、俺が合流するまで粘る自信があるから言ってんだよな?二体に分裂する鬼相手にも渡り合えるっていう自信あんだよな?」
天元に握り締められた手を握り返し、風音はしっかりとした口調で答える。
「はい。天元さんが合流してくださるまで粘る自信があります。私は予知能力と毒の血を使えるので、天元さんが合流するまでに動きを鈍らせるところくらいまではどうにかやってみせます。隊服の袖も毒の血を活用するためになくしたんですよ」
それはさっき見たので知っている。
そしてやはり天元の想像通りおっかない戦い方を選択し鬼狩りを遂行しているのだ。
「はぁ……分かった。嬢ちゃんの手段を採用してやる……してやるから首と手首だけは切ってくれんなよ!切ったって分かった時点でもう戦わさねぇからな!派手な返事!」
「はい!首はもう懲り懲りなので絶対に切りません!あの……潜入前に私からも確認があるのですが、二日後に鬼が動き出すまで私は逢瀬を交している鬼と男性客の様子を毎夜伺っていればいいのでしょうか?」
それはかなり気まづい。
「あぁ、それね……いや、嬢ちゃんにそんなことをさせると不死川にドヤされっからな!俺が見張っとくから嬢ちゃんは有事の際にいつでも戦える準備しててくれ!」
どうにか配置や役割が決まり形式上天元に売られるという名目で、風音は女装させられた炭治郎たちとともに花街へと繰り出していった。