第13章 夜闇と響鳴
「本当に嬢ちゃんはこういう時はきかん坊になっちまうんだなぁ。だが!俺は許可を出さねぇ。不死川がこの場にいることを想定してみろ、先を見続けんじゃなくて実際にその場で対処しろって言うと思わねぇか?」
きっと実弥はそう言うに違いない。
しかし対処出来るのは実弥が柱だからであり、柱でもない自分の力量で対処出来るかなど分からないのだ。
柱の指示に従うべきか無理にでも見せてもらうか……そう迷っているとありありと分かる表情をしている風音に苦笑いを零し、天元はひっそりと羨んでいる派手な金色の髪を撫でた。
「嫁たちがいる場所、鬼の特徴や血鬼術、んでもって鬼の潜んでる場所まで嬢ちゃんは命懸けで見てくれた。嬢ちゃんはただでさえ鬼共にも狙われてんだ、何かあった時のために無茶するべきじゃない……返事は?」
「はい……私の力量は天元さんの足元にも及びませんが、天元さんや伊之助さんが奥様たちを救い出している間、私は本体をどうにかしておきます。竈門さんは花魁さんの保護なので……我妻さんには街中の人々の避難誘導を」
自分の配置を決めてしまった風音に目を剥き、天元は頭を強めの力で掴んだ。
「ちょっと待った!俺、嬢ちゃんには我妻と避難誘導しててくれっつったよな?!何で鬼と戦おうとしちゃってんの?!え、柱の指示には素直に従うって不死川も煉獄も言ってたんだが……俺の聞き間違いか?!」
実弥よりも優しい力なので風音にとって天元が掴んでいる力はなんてことない。
キリッと眉を上げて天元を見つめ自信満々に答える。
「お聞きになられていませんか?鬼に対して有効な手段を使うなという指示には頑なに首を縦に振らないと。天元さん、私は鬼にさえ触れられれば鬼の先も見えるんです。一度触れることが出来ればギリギリであっても対処可能です。有効な手段は使うべきだと思います」
任務前だと言うのに既に天元の頭の中は錯乱状態だ。
確かに実弥や杏寿郎からそう聞かされていた。
しかし柱三人分の強さを誇る上弦の鬼と、甲と言えど柱でない一般剣士の風音がたった一人で対峙したいと言うなど、想像の範疇を遥かに超えていたからである。
「……一応聞いとく。不死川ならその手段を快諾したか?」
「……快諾はしません!しませんが、生きて実弥君の合流を待つっていう条件付きならば渋々遂行させてくれます!」