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涼風の残響【鬼滅の刃】

第13章 夜闇と響鳴


頭を下げて立ち上がり部屋を意気揚々と後にしようとする風音の腕を掴み、天元はゆっくりと首を左右に振った。

「勝手に見えちまうのは仕方ないが、嬢ちゃんの意思で見るのは俺の前だけにしといてくれ。煉獄の時に重傷負ったって報告受けてるし、腕に出るっていう痣のこともあるだろ?本当に……何かあってからじゃ取り返しつかねぇんだ」

どれも風音にとっては過去のことなので気にとめていなかったが、思い返せばそれら二つの出来事があってからは実弥も口には出さないものの慎重に予知や戦闘において誘導してくれていたように思える。

ただ着替えるだけならば何か有益な情報を先に……と考えていただけなので風音は心配そうに眉をひそめている天元に頷き返した。

「かしこまりました。では着替えてお待ちしていますね」

「おう!俺はもうすぐ到着する竈門たちをこの部屋で変身させるだけだ!分かんねぇこととか不測の事態が起きちまったらすぐに呼んでくれ!」

「はい!では失礼します」

先ほどまでとはうってかわって静かに落ち着いた様子で部屋を出ていった風音に天元は小さく息をついた。

「心臓に悪ぃ……しかもあの隊服袖がねぇ。えぇ……あれ絶対腕を切り付けやすくするためだよな?師弟揃って特殊な血を使って鬼狩りとかおっかなすぎんだろ。普段不死川がどうやって戦わせてんのか聞いときゃよかった」

聞いても参考になるかは微妙なところだ。

鬼の話に耳を傾ける暇があるなら、さっさと頸斬っちまえ……戦法なので。





「今回の鬼はどんな鬼なんだろう?最低でも下弦の鬼、運が良かったら上弦の鬼だって実弥君言ってたけど。運……あったらいいな。上弦の鬼をここで一体でも倒せたら鬼殺隊にとって追い風になるはず」

飽くなき鬼狩りへの強い想いを呟きつつ天元でさえ身震いした隊服をパサリと畳へと落とす。
すると見えるのは実弥に願って付けてもらった痕。

その痕をそっと手で触れてから用意された着物を羽織る。

「奥様たちも見つけ出して鬼も倒して帰らなきゃ!実弥君が待っててくれてるんだから!」

耳のいい天元はきっと今の言葉も聞こえてるはず。
……心の中で無茶をしてくれんなよと祈っているに違いない。
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