第13章 夜闇と響鳴
「うん、嬢ちゃんなら大丈夫そうだな!色男の俺が至近距離で見つめても顔色一つ変わんねぇし……まぁ他の男がこれくらい近付いて来たら今みたいに首傾げんじゃなくて、さっさとその場から離れてくれよ?嬢ちゃんに何かあったら不死川に顔向けできねぇ」
「どうやら実弥君のお顔で綺麗なお顔には免疫が出来たみたいです!天元さん、ご心配には及びませんよ!実弥君から天元さんや鬼殺隊の方々以外の男の人には頭突きをしなさいと言われてますので!」
どうやら居間で懇々と言い聞かせられていた話の中にそういったものがあったらしい。
それはまぁいいとして自然と惚気ける風音の発言や、厳重な実弥の風音に対する男対策を天元は笑い飛ばした。
「いいねぇ!まぁ店ん中で暴力沙汰は考えもんだが、嬢ちゃんはそれくらいの心積りでいた方がいいだろうな!よし、嬢ちゃんは隣りの部屋に用意してる着物きて待機しててくれ!」
「はい!すぐに着替えてお待ちしております。……天元さん、ごめんなさい。その……すぐに遮断したんですが見えてしまったんです……奥様方を探している天元さんが。あと、竈門さんたちも私と一緒に潜入するんですよね?勝手に見てしまって」
実弥にも風音にも天元は言っていなかった。
先に花街の遊郭に花魁として潜入していた嫁たちが消息を絶ってしまったことを。
実弥はともかくとして跳ねっ返りな性格だと噂になりつつある風音の耳にその情報を入れてしまうと、何を差し置いても行方不明になってしまっている嫁たちを探しに行くだろうと確信を抱いたからだ。
「謝る必要ねぇって!嬢ちゃんの予知能力は扱いが難しいのも聞いてるし、その難しい能力を扱えるようになるためにほぼ毎日不死川と任務に赴いてんのも聞いてるからな!……嬢ちゃんがいいなら後で嫁たちのこととか鬼のこと教えてくれると助かる!」
実弥の言った通り……柱である天元は先を勝手に見られたにも関わらず不快な様子は一切見せなかった。
むしろ歓迎だと言わんばかりに笑顔を向けてくれているので、それが風音の胸の中で何かを奮い立たせた。
「もちろんです!……奥様たちがどこにいるのか、どこの誰が鬼として潜んでいるのか、二ヶ月先まで見れるようになったので着替えながら確認しておきます!」
(跳ねっ返りってのはあながち間違っちゃいねぇな)