第2章 柱
「柊木?」
「風音ちゃん?おーい!」
(役に立つにはどうにかして鬼殺隊に入らないとだよね?まずは強くならないと……実弥さんにお願いして鬼殺隊に入る方法を……)
「おい!」
一人考えを巡らせていると突然頬を強く掴まれ、勢いよく視界が移り変わり実弥の顔が映し出された。
その表情は少し焦っているようで、風音は首を傾げる。
「どうしました?何か……」
「どうしました?じゃねぇだろォ。真顔で絡繰人形みてぇに同じ動作繰り返してるわ、誰が呼びかけても反応ねぇわ……具合悪ぃなら宿に戻るかァ?」
そう言われて視線だけをソロソロとおはぎに移して驚き肩をビクつかせた。
「おはぎが!半分以上なくなってる!……ごめんなさい!色々考えてたら意識が飛んじゃってたみたいです。実弥さん、皆さん……ごめんなさい。体調は大丈夫なんです」
シュンと実弥に頬を掴まれながら視線を落とすと、どこからか吹き出す声が聞こえた。
「嬢ちゃん面白ぇなぁ!永遠とおはぎを口に運んで離して咀嚼して飲み込んで……を真顔で繰り返してたんだぞ!煉獄の馬鹿でけぇ声にも全く反応しねぇし……ブフッ!気に入った!俺のことも名前で呼べよ!」
どうやら吹き出したのは天元らしい。
下手をすれば失礼に当たったであろう行為が何故か気に入ったらしく、ニカッと笑って名前で呼ぶことを良しとしてくれた。
「あ、はい!ありがとうございます!天元さん!……あの、実弥さん。そろそろ手を……離してもらえると……たぶん変な顔になってると思うので恥ずかしいです」
「こうしてれば意識飛ばねぇだろ。食い終わるまでこうしててやる」
本人の想像通り頬を強く掴まれているのでムギュっとなっている。
そんな顔を元に戻したくて実弥の手を掴んで引き離そうともがいてみるも、どういう訳か一向に離してくれる気配がない。
おはぎを食べるにしても離してもらわなければ食べられないが……緩まることのない力に抗うことを諦めた。
そうこうしていると今度は黄色い声が上がった。
「二人は仲良しなのね!風音ちゃん可愛いわっ!」
「……離してやらないと食うに食えないのではないのか?甘露寺が和んでいるならば俺は問題ないが」