第12章 紋様と花
「そこ気にする前に……キュロット捲れ上がってんの気にしろよなァ……ったく。白はやめとけェ、冨岡と揃いとかなんか気に食わねぇ。羽織と揃いにしとけよ」
「そう……なの?実弥君は冨岡さんのこと」
「嫌いだ」
……口を挟む間もない。
風音の義勇への印象は実弥と違い悪くない……と言うより柱の全員が好きなので嫌いになるはずがない。
実弥が風音のために藤の花の木を探している時、柱全員が何故か一丸となって探し回ってくれたと聞いていたので悪くなる要因がそもそもないのだ。
「脚絆は羽織とお揃いにするとして……」
木刀を腰にしまいちょこちょこと実弥の前に歩み寄った風音は、自分より大きく暖かな手を握りしめてふわりと微笑んだ。
「いつの日か誤解が解けて仲良くなれたらいいね。私は実弥君とぉ?!」
不思議なところで言葉を途切れさせた風音の視界は真っ黒。
そして実弥の目に映ったのは、鎹鴉たちにとって宿り木なのではないか?と思うほどによく体のどこかに鴉を携えている風音……今回は天元の鎹鴉である虹丸が肩に止まり何故か目元を翼で隠している。
「何やってんだよ……あんまコイツ虐めんなァ。楓と爽籟が血相変えて」
言わんこっちゃない。
楓が悲しげに目じりを下げながら反対側の肩に降り立ち窘め始め、爽籟が頭の上に降り立ち虹丸に怒りを露わにしだした。
よく分からない状況に視界の開けた風音は苦笑いを零し実弥は再び溜め息だ。
「お前ら風音の上で揉めんなァ。虹丸が来たってことは任務のことじゃねェのか?」
「そうだよね。楓ちゃん、爽籟君、ありがとう。私は全く気にしてないから大丈夫だよ。一緒に虹丸さんのお話聞こう?」
いつの間にやら軽く口喧嘩の始まっていた鴉たちを風音がそれぞれ撫でておさめると、虹丸は携えてきた天元からの言伝を口にした。
「今カラ迎エニ行ク!日輪刀ダケ忘レズ準備シテ待ッテテクレ!花街デ任務ダ!」
脚や情報の早い天元らしい言伝だった。
2人は顔を見合せて同時に修練場から足を動かして不死川邸へと向かう。
「今から任務だって!頑張らなきゃ!」
「心の準備もクソもあったもんじゃねェなァ。おい、風音。念の為、アレも用意していけよ?」
実弥の言葉に風音は慎重に頷き返した。