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涼風の残響【鬼滅の刃】

第12章 紋様と花


「夙の呼吸 玖ノ型 星の入東風」

地面を踏みしめ実弥の背丈よりも遥か上で体を何度も捻り回転を重ねては速度を増し、両手で日輪刀を握りしめて無数の斬撃を繰り出す。

柔らかに映るそよ風のような風は鋭利な刃に違いなく、的を粉々に吹き飛ばして静かに辺りに溶け込み消えていった。

それに伴って風音もふわりと地面へと降り立ち……実弥は目のやり場に困りそっぽを向いている。

「師範!上手く出来ました!見ててくれましたか?玖ノ型も花街での任務で使えそうですよね?」

「あ"ぁ"……技は問題ねェ。それよりやっぱ隊服どうにかしねェかァ?俺以外の前で出されると思うと苛立っちまうんだが……クソッ」

実弥への呼び方が定着した現在、照れながら実弥君と呼び始めてから一ヶ月が経過した。
玖ノ型も無事に風音が扱えるようになったのだが、要望を出したものの隊服は今までと同じキュロットである。

「隊服は要望を出したんですけど、何故か要望が通らないんです。前田さん以外にお願いした方がいいですか?」

「はァあ?!お前……よりにもよって前田に要望出すなよ!アイツは隙あらば際どい隊服をお前に着せようと企んでるような奴だぞ!そんな奴に要望出して要望通ると思うかァ?」

と言われても風音は前田しか縫製係の知り合いはいない。

楓に願って何度か前田宛に手紙をしたためた結果……キュロットのままで風音自身もしょんぼりしているところだ。

「私の隊服のご担当者が前田さんだと思ってたから……実弥君の隊服のご担当者を紹介してもらうことは出来る?あ、この羽織を作ってくださった藤の花の家紋の家の女主人さんにお願い……出来ないかな?」

「てか俺の隊服作ってくれてんのその人だ。俺から聞いといてやる。早くズボンにさせねぇと……」

生脚を惜しげも無く周囲に見せてしまうことになる。
本人はあまり気にとめていないようだが、跳躍して技を出すことの多い夙の呼吸を扱うにはどうも不向きに思える……実弥にとっては。

「早くお揃いにしたいね!脚絆はどうしよう?胡蝶さんみたいに羽織とお揃いがいいかな?それとも冨岡さんみたいに白がいいかな?」

実弥の胸中察せず……無邪気に脚絆に思いを巡らせる風音に思わず溜め息が零れた。
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