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涼風の残響【鬼滅の刃】

第12章 紋様と花


「あぁ……なるほどね。そりゃあ行かせたくないわな。けど階級的に嬢ちゃんが一番適任なんだよなぁ……ツテはねぇが嬢ちゃんが男に手ぇ出されないよう計らうつもりだが……」

いくら自分が目の前の少女を慈しみ可愛がって大切にしているからと言って、階級的に適任だと柱の一人である天元が選んだ風音を引き止め続けることは出来ない。

せめてどんな場所での任務なのか……気が進まないながらも風音に伝える。

「なァ、風音。花街は女を売り買いする店が並んでんだ。綺麗なべべ着て綺麗に化粧した女を男が買って……体の関係をもつ。その女の中には親の借金のカタや口減らしに店に売られ、嫌だと思っても店から逃げられねぇから泣く泣く働いてる女もいる。そういった場所で割り切って下働きとして潜入出来んのかァ?」

男女の沙汰について風音はよく分からない。
ただ望まぬ相手と一夜を共にし頬を撫でられ口付けをし、体に触れられるのだということは分かった。

遊女全員ではないにしてもそれを辛いと思っている女性もいるのだと思うと気持ちが暗く沈む。

「それは……分からない。でも鬼が潜んでいて女性たちを苦しめているなら、倒さなきゃいけないとは思う。女性たちを解放することは出来なくても、命を守ることだけはしたいな」

鬼殺隊の剣士として真っ当な返答を返してきた風音に小さく息を零してくしゃりと頭を撫でた。

「そう思うなら宇髄に着いてってみろ。だが元忍の柱である宇髄や女房たち相手に尻尾掴ませねぇ鬼だ。最低でも下弦の鬼……ついてりゃ上弦の鬼相手にすることになる。はァ……死なねェように鍛え直してやるよ」

どうにか自身の中で折り合いをつけた実弥に笑顔で頷き、ようやく緩まった腕の中から顔と手を出して天元の手を握り締めた。

「天元さん、精一杯務めさせていただきますのでよろしくお願いします!ご希望とあらば先を見てお伝えすることも可能なの……むぅ……」

いつもなら頬を掴まれるだけだったのに、ついには唇が開かないようにつままれてしまった……実弥に。

「むぅ……じゃねぇだろォ!お前今の状況分かってんのかァ?!首に刀傷だぞ!今先見て何かあったら死んじまうだろうがァ!」

「むん……」

家鴨のような口になったまましょぼくれる風音の顔がおかしかったのだろう、天元が吹き出した。
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